SMALL TALK

small talk : 世間話、雑談

仲のいい人が熱狂的なトランプ支持者だった話

僕は小学校に入る前の6歳の頃から高校卒業直前の18歳の時までの約12年間、小さな英会話教室に通っていた。
長い間通っていたから、教えてくれる先生も結構なスピードで入れ替わっていった。長い人では数年間教えてくれる人もいた一方で、2、3ヶ月くらいでいなくなってしまった人もいたりと様々だった。中には失踪した人もいたっけな。
 
そんな中でも一番思い入れがあるのは、最後に教えてくれたアメリカ人の先生だ。彼は確か中学卒業前から教室を辞めるまでの3年ちょいくらいの間、教えてもらっていた。
彼とは音楽の趣味が合ったこともあって、とても仲良くなった。もはや先生と生徒と言うよりか、歳の離れた友達感覚で接していた。僕が高校卒業のタイミングと同時に英会話を辞めたのも、この先生が帰国するタイミングと重なったからちょうどいい機会だと思ったのが理由だった。そのくらい大好きな先生だった。
 
彼が帰国する直前に、Facebookのアカウントを教えてもらった。アカウントを知ってさえいれば、国が離れててもお互いの状況を追えるし、メッセージのやりとりもできるので最高じゃん!と当時は軽く考えていた。
だが、こういったSNSというのはその人の見たくない部分までもを暴いてしまう。実は彼、熱狂的なドナルド・トランプ支持者だったのである。(笑)
 
ドナルド・トランプといえば皆さんご存知の通り、現職のアメリカ大統領である。
歯に衣着せぬ物言いがトレードマークといえば聞こえはいいが、TwitterなどのSNSを使った他者への人格攻撃、ヘイトスピーチプロパガンダなどでかなりの物議を醸す人物でもある。個人的な意見を言うと、一国のトップにはとてもじゃないけど相応しくない人物であると感じる。
 
ただ、個人的なスタンスは置いといて、別に彼がトランプ支持者であること自体は問題ではなかった。実際、高校最後の年はちょうど大統領予備選が行われている最中だったが、その頃から彼はトランプを支持していることは匂わせていたし、僕も「確かにそういう考え方もあるよな」と特に気にも留めていなかったから。
僕が見ていられないと感じるのは彼がトランプに感化されて、トランプがSNS上で発するような内容をFacebook上でも投稿していること。
 
最近の例で言うとなんといってもBlack Lives Matter運動について。
投稿を見てみると彼が住んでいる街でも大規模な抗議活動があったみたいで、破壊活動や略奪行為も散見されたらしい。それを彼は「急進左派テロ組織のアンティファの仕業」と一括りにまとめ、CNNなどのメディアを「本当の姿を伝えないフェイク・ニュースで、信じない」としていた。
また、彼が公式アカウントの投稿にコメントしているのもFBのいらない機能のせいで見えてしまうのだが、そこでも同じような感じで、ジミー・キンメルのようなBLM運動に賛同するセレブリティに対しても批判コメントを投稿したりしていた。よくいますよねこういう人…。
(アンティファについては有用な記事があるので下に貼っておきます。過激であるのは間違いありませんが、いわゆる「テロ組織」とは違う団体みたいです)
 
確かに犯罪行為に関しては糾弾されるべきだ。だが、過激な組織とは関係のない平和に活動する人がプロテスターの多数を占めているのは間違いないし、犯罪行為を行うような輩は少数なはずだ。CNNなどのメディアを信じないというのも、「自分の信条と合わない不都合な情報は信じない」という思考停止そのものの行為の表れではないのか?
 
BLM運動がここまで発展したのは、ジョージ・フロイドさんが警察官に殺害された事件をはじめとする、黒人に対する理不尽な行為がいつまで経っても後を絶たないことに対する人々の怒りの表れに他ならない。そういった事情も考えずに、トランプのような思慮の浅い投稿を繰り返す彼に僕は心底呆れてしまった。もしも彼が赤の他人だったら、迷わずブロックしていただろう。
 
だが、事態が単純ではないのは、彼が決して悪人ではなくむしろ良い人であるという事実だ。このことが僕の感情をこれでもかと揺さぶってくるのだ。(きっと似たような経験がある人は多いのではないだろうか?)
少なくとも日本にいた頃の彼は、他人の意見を尊重し、気配りのできる優しい人物だった。本国でも社会的に信用のある職についていると聞くし、いわゆる南部のブルーカラーの白人といった、メディアが報じるようなトランプ支持層とは全く違う人物なのだ。
そんな彼がなぜトランプみたいなヤツに同調し、同じような発言をしてしまうのか…  本当に人間って分からない。
 
 
結局、僕は彼のそういう部分には目を瞑りこれまで通り仲良くしていってしまうと思う。卑怯かもしれないし、実際どうするべきなのか分からないけど、彼の醜い政治的スタンスに蓋さえしてしまえば、彼はいい人間だから。
だけれど本当にそれでいいのだろうか?という思いが心の中にあるのも確かだ。その辺りの折り合いをどうつけていくべきか… すごく難しい問題だし、こういうことには一生頭を悩ませていく気がする。