My Mind Makes Noises / Pale Waves
こんにちは。
green-david0705.hatenablog.com
前回に引き続き、Pale Waves特集第二弾は「My Mind Makes Noises」を聴いた個人的な感想。
彼らの音楽を初めて耳にしたのは去年。
たぶん「Television Romance」が出た頃だろうか。
「おっ、またイギリスからいい曲書くバンドが出てきたなあ。でもちょっとThe 1975に似ているなあ。」という感想を抱いたことを覚えている。
その時はこのPale Wavesのことをそこまで好きになったわけではなかったが、その後の怒涛のシングル攻勢を経て、彼らが「The Tide」をリリースする頃にはすっかり虜になってしまっていた。
簡単に言ってしまうと、彼らの曲は全て
「エモい」
のである。
(この「エモい」というワード、大変便利な言葉なので日常でも濫用してしまいがちな言葉である。使いすぎには注意していきたいところ…)
もう少しちゃんと説明すると、彼らの紡ぐメロディは僕の琴線に触れまくるのだ。
心のやらかい場所を締め付けて、聴くたびに感傷的な気分になってしまうのである。
個人的な話になるが、僕は大学生になってから気持ちの浮き沈みがとても激しくなってしまった。
気持ちが落ち込んでしまう所謂「バッドな時期」に入ると体が重くなってやる気が全く起こらなかったり、ひどい時には周りにいる楽しそうな人間に嫉妬して全員死んでほしいとさえ思うこともある。
そんな「バッドな時期」に入った時は自分の好きな音楽を聴いて心を鎮めるようにしているのだが、その中でもPale Wavesは特に、持ち前の「エモい」メロディを持ってして僕の脆い心を支えてくれたのである。だから彼らは、僕にとって思い入れのある特別なバンドなのである。
アルバム冒頭の3曲は全て既発のシングル曲で構成されている。もう既に定評のある曲ばかりなので、ビギナーにとってもつかみはオッケーだろう。
「Eighteen」はイントロのシンセ音や開放感のあるサビが印象的な曲。アルバム全体に向けての期待が高まるオープニングナンバーとなっている。
「There's Honey」は彼らのデビュー曲。
このアルバムのためにボーカルは新しく録音され、楽器隊もベース音が大きくなったりと新たにリミックスされている。
何度も繰り返し聴いているオタクなんでこれくらいすぐにわかるんですよ。ふふっ。
そして「Noises」。
実質的なタイトルトラックであり、アルバムの中核をなしているこの曲は僕にとっても大切な一曲である。
この曲は確か7枚目のシングルだったと思うのだが、この頃になってくると彼らがリリースする曲も似たり寄ったりで早くもマンネリ化してきていて、僕のPale Wavesに対する興味もだんだんと薄れていっていた。
「Noises」がリリースされた時も「どうせ同じような曲だろうけどとりあえず聴いておくか」くらいの心構えだったのだが、思いの外これが新機軸の相当いい曲だったのである。
いや、いい曲というか、MVを見てもらっても分かる通り、ヴォーカルのヘザーの低い自己肯定感といった心情を素直に吐露した曲というべきか。要するに「エモい」のだ。
この曲のおかげで僕はPale Wavesを再発見することができたし、そういう意味でもこの曲は僕にとって大切な曲なのである。
「Loveless Girl」から「She」まではポップネスを抑えた内省的な楽曲が続き、その流れを解き放つかのような「One More Time」へと繋がる。
Weezerもビックリの見事な泣きメロ。歌詞も切ないし、彼らのイイところが凝縮されたような1曲となっている。どんだけ良曲を量産すれば気がすむんだ…?
海外サイトでも指摘されているが、MVは恐らくPlaceboの「Teenage Angst」をオマージュしていると思われる。曲調全然違うけど。でもどっちも最高だよね。
アルバム後半は「One More Time」を始めとしてポップなアンセムの連打が続く。
「Kiss」みたいにキュアーっぽいギターに切ない歌詞が合わさった曲とかもう本当に最高。最高すぎて死ぬ!
大半のリスナーはここで良メロの波に溺れ死にそうになると思うのだが、そこへ助け船のように現れるのが最終曲「Karl (I Wonder What It's Like To Die)」である。
ヘザーが14歳の時に亡くなってしまった、彼女の祖父への愛を綴った曲。
アルバム中唯一のアコースティック編成で演奏されるのもあってか、ものすごく内省的で感情的な印象を受ける。聴く者の心を洗い流すような、フィナーレにふさわしい1曲。
— HBG (@HBARONGRACIE) September 14, 2018
このPale Wavesのデビュー作「My Mind Makes Noises」は、ヘザーがこれまで経験した出来事からインスパイアされた楽曲を集めた、いわば彼女のこれまでの人生の集成的な作品である。
生と死、恋愛に友情、苦悩、家族…。シチュエーションは人それぞれ違えど、誰もが経験するようなことだろう。そういったテーマを元に真摯に曲を作り続ける彼女の姿勢は尊敬に値するものだと思う。
正直、客観的な見方をすると彼らの音楽は、メロディはすごくポップで優れてはいるけれど、音楽的に何も新しいことはしていないしヒネリもない。アルバム中も結構同じように聞こえる曲が多い。
(僕はそんなこと微塵も思ってないけれど、あくまでも「客観的に」見た場合の話。)
だからアルバムの評価が賛否両論だったり、叩かれたりされるのも気持ちはまあ分からなくもない。
でも、彼らが真摯に音楽や人生と向き合って作る作品は僕の心にストレートに届いて、いろんな感情を引き起こしてくれる。彼らの曲を聴くといつでもどこでもエモくなれるのだ。
曲のバリエーションが少ないだとか、The 1975に似てるとか、そういうどうでもいいことは偉大な音楽の前ではちっぽけなものなのだということを実感させられる。
思うに、これは恋に近いんだと思う。きっとこの記事を読むみなさんにもそういうミュージシャンの1人や2人はいるだろう。未だにこういう特別なミュージシャンに出会う機会をもらえることに感謝したいと思う。
なんだかよく分からない終わり方のアルバムレビューになってしまったけれど、Pale Waves関連の記事はもうひとつ書く予定です。しばしお待ちを!