SMALL TALK

small talk : 世間話、雑談

2010年代・ベストアルバム10選

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今回は、2010~2019年で個人的に気に入った聴いていたアルバムについて、つらつらと書いていこうと思います。
一応ディケイド・ベストということなので、ある程度シーンへの影響力という観点も考慮に入れて選出してはいますが、何せしっかり音楽を追いかけはじめたのが2013年と途中からで、その上全ての作品を聴けている訳ではないので、かなり個人的な好みが入っていると思います…笑  真面目に受け取らずに楽しんでいただけると幸いです。
 
 
 
 
 
 
1. The Next Day / David Bowie (2013)
ロックレジェンドの久々の帰還ということで、音楽界に一大旋風を巻き起こした作品。個人的にも音楽にのめり込む最大のきっかけとなった作品で、そう言った意味でもディケイド・ベストに選出してみた。
内容的にも、長年ボウイが取り組んできた様々なジャンルの音楽が混ざり合って、そこに彼の個性が加わることで唯一無二の存在感を放っている。雑多な印象にならずに、ある程度の統一感を持たせてまとめ上げてくる所がやはりベテランの技と言うべきか。総合力が非常に高い、万人に喜ばれるような傑作。ボウイ入門にもいいですね!
 
 
 
 
 
2. AM / Arctic Monkeys (2013)
ブラック・サバスばりのヘビメタ風ギターリフと90年代ヒップホップ風のリズムを掛け合わせた全く新しい、それでいて伝統的なロックンロール風味も感じることができる、新時代の傑作ロックアルバム。正直この作品によって、現在の彼らのロック界の王者的なポジションが確実なものになったんだろうなと思う。
冒頭を飾る「Do I Wanna Know?」も世界的にロングヒットを巻き起こすなど、セールス面でも申し分ない作品。ここ10年間で一番評価されるべきロックアルバムではないだろうか?
 
 
 
 
 
3. The Bones Of What You Believe / CHVRCHES (2013)
時代はめぐりめぐって、2010年代では80’s風サウンドがポップス界を席巻していたように感じる。
その中でも際立っていたのが、2011年結成のグラスゴー発エレクトロ・ポップスバンドのCHVRCHES。彼らはこのディケイドに3枚の作品を残したが、その中でも一番アイコニックなのがこのファーストアルバムであるように思う。
この作品がインディー界でヒットしたおかげで、可愛い女の子をフロントに据えた同じようなバンドがうじゃうじゃ大量発生したような、そんな印象。笑
昨年出たサードではもはやスタジアム・ポップとでも言うべき壮大なサウンドが繰り広げられているが、ここで奏でられているのはあくまでも懐かしいシンセ音を中心に据えた、少し宅録っぽいDIY的ポップス。楽曲に関しては出来にムラがあるものの、「The Mother We Share」「Guns」など飛び抜けて素晴らしい出来のものも。多分かなり主観が入っているとは思うが、この作品も2010年代の音楽シーンを表す1枚としてカウントしてもいいかなと感じる。
余談だが、彼らみたいにバンドの代表曲的な楽曲を早い時点でいくつ書けるか、そしてビジュアルが印象的かどうかという、新人バンドの将来性を占う基準みたいなものを自分に教えてくれた、そんなバンドがCHVRCHESだ。
 
 
 
 
 
4. Ghost Stories / Coldplay (2014)
前作「Mylo Xyloto」で陽キャ路線まっしぐらだった彼らがその次に発表したこのアルバムは、打って変わってどこまでも暗いメランコリックな雰囲気の作品となった。
フロントマンであるクリス・マーティンが前妻グウィネス・パルトロウと離婚したのがその主な要因と言われているが、そのせいなのか失恋ソングが多いのが曲のタイトルからも見てわかる。(失恋ソングとか言うと西野カナっぽく聞こえるけど)
構成自体も完全なコンセプトアルバムとなっており、終盤を飾るEDM調の名曲「A Sky Full Of Stars」でそれまでの地味な展開から一気に解放される流れも見事。今は亡きアヴィーチーといった2010年代のスターも関わっていることもあるし、アルバム全体を覆うメランコリックなムードが時代性とリンクしていると言えなくもない。この作品もディケイド・ベストに選出されるべき存在だろう。
 
 
 
 
 
5. DANCE TO YOU / サニーデイ・サービス (2016)
大滝詠一作品も手掛けた永井博によるジャケットが印象的なこの作品は、ジャパニーズ・ポップのいいところをこれでもかと詰め込んだアルバム。
これまでのサニーデイらしい、古き良き日本風のポップネス溢れたメロディと、近年の彼らの作品の特徴である、ファンクの影響色濃いリズムが組み合わさって、懐かしいけど新しい、そんな新感覚で楽しめる作品になっている。
春っぽい雰囲気の楽曲が多く、新しい日々の始まりといったようなポジティブな感覚を覚える一方、別れだとか死だとか、どこか切ない雰囲気も兼ね備えているのが印象的。(昨年の丸山晴茂の死もあってか、その印象はより強くなってしまった)
近年の音楽的トレンドの最先端をいくような作品ではないけれど、後世まで語り継がれるべきタイムレスな名盤であるように思う。
 
 
 
 
 
6. A Moon Shaped Pool / Radiohead (2016)
現代最高峰のロックバンドとして名高いレディオヘッド。彼らは2010年代に2つの作品を発表したが、個人的な感想を言わせてもらうとこの「A Moon Shaped Pool」の方が完成度としては高いと思う。
もうひとつの「The King Of Limbs」の方はアフリカン・ビートにも通じる肉体的なリズムの追求に重きをおいた作品であったが、それに対してこちらは徹底したメロディーの追求がなされた歌もの作品。美しいストリングスの旋律と、クラシック/現代音楽的な要素も相まって、例えるなら水墨画のような幽玄な世界を作り上げている。こういった作風は、トム・ヨークが長年連れ添ったパートナーと離婚したことも影響しているように感じる。美しさの裏に、一種の寂しさのようなものを感じさせるのである。残念なことではあるが、これもこの作品の素晴らしさを引き立てるひとつの要素になっていると思う。辛い出来事を創作活動への意欲に昇華させてしまうミュージシャン、本当に凄いと思う。
とにかく、このアルバムはタイムレスな輝きを放ちながらも、ロックの新しい可能性を切り開いた革新的な作品だと言えるだろう。惜しむべくは、彼らのレベルに追いつけるバンドがあまりにも少なく、ロック界全体を推進させる結果には至らなかったことか…。
 
 
 
 
 
7. FANTOME / 宇多田ヒカル (2016)
先ほど紹介したレディオヘッドのアルバムと似たキャラクターを持つ作品が、同じ2016年に発表された宇多田ヒカルの復帰作「FANTOME」である。
2010年に音楽活動を休止し、「人間活動」に取り組んできた宇多田には再婚や出産など様々な出来事が起こったが、その中でも今作に多大な影響を及ぼしたのは母親である藤圭子の死だろう。この悲痛な出来事を音楽で表現するかの如く、「花束を君に」や「真夏の通り雨」のように、この作品には明らかに死を意識したような楽曲が多く収録されている。「人生最高の日々」みたいに、開き直ったような明るい世界観の楽曲も収録されてはいるが、根幹をなすのはやはり先ほどのような重いテーマであることは確かだ。特に「忘却」でひたすら続く重苦しい展開は、聴いている者の心をえぐるほどに強烈である。
次作「初恋」のような、生の喜びに満ちた作品も魅力的ではあるが、音楽的な観点だとか時代性(そして個人的な好み)を考えると、この「FANTOME」の方がより好ましいチョイスであると僕は思う。
 
 
 
 
 
8. Post Pop Depression / Iggy Pop (2016)
これまた2016年の作品。えげつない年ですね…。(ちなみに3年前、この作品を2016年の年間ベストに選びました)
QOTSAジョシュ・ホーミとタッグを組んで制作されたこの作品、イギー本人はこれを生涯最後の作品にするという意気込みで制作していたらしいが、まさにイギー最終章を飾るにふさわしい、威圧感満載の大傑作に仕上がっている。ベルリン時代の二部作「The Idiot」と「Lust For Life」を青写真にして制作が進められ、その影響は各所に伺える。「German Days」なんか、ドラムサウンドはあのデニス・デイヴィスが叩く加工されたドラムそのものだし、歌詞もベルリンでのボウイとのナイトライフを思い起こさせるような内容だ。
先ほど名前が出てきたアークティック・モンキーズのマット・ヘルダースがドラムを叩いているなど、同時代性も兼ね備えてはいるけれども、基本的にこの作品はイギーのこれまで辿ってきたキャリアを総括するような内容となっている。そんな作品をどうしてディケイド・ベストに選んだのかというと、ロック・アルバムとしてただただ最高にカッコいいからだ。70を超えたベテラン・ロッカーがこんな圧倒的な作品を出すという事実に驚きを隠せないし、これからも元気に活躍してもらいたいものである。
 
 
 
 
 
9. WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO? / Billie Eilish (2019)
2010年代最後の年に登場した作品。正直な感想を言わせて貰えば、彼女は次の2020年代にこそ真価を発揮し、時代を先導していくミュージシャンだと思っている。なので今回のディケイド・ベストに選出するのは時期尚早だと感じなくもないが、あえて選出させてもらった。
彼女に関しては、まず21世紀に生まれたことに起因する、ジャンルを感じさせない自由なミックス感覚だったり、女性性をあまり前面に押し出さない点、最近のメインストリームで活動するミュージシャンには珍しく兄との共同作業で楽曲を制作している点など、その存在自体に圧倒的な「新しさ」がある。今までにありそうでなかったタイプのミュージシャンであると思う。これから彼女の手法を模倣するミュージシャンが数多く出てくることは容易に予想でき、前途多難な道のりが待っていると思うが、彼女の実力なら絶対に生き残ることができると僕は確信している。頑張れビリー・アイリッシュ
 
 
 
 
 
10. Blackstar / David Bowie (2016)
この10年間で、どれか1枚アルバムを選べと言われたら、僕だったらこの作品以外に考えられない。それくらい色んな意味で圧倒的な作品だった。
この作品を語る際に切っても切り離せないのが、発売2日後に起こったボウイの死という出来事である。この完全に仕組まれたとでもいうべきタイミングのせいで、意図して作られた遺作という評価を与えられがちなこの作品であるが、実際にはそうではないと僕は思う。
制作中の話を聞いていると、どうやら本人は生きる気満々で制作に臨んでいたらしい(転移が発覚する前は、治療も奏功していたようだ)
作品中になんとなく死臭が漂っているのは彼の作品ではいつものことだし、今となってはこのアルバムは死を前にした男のスワンソング集というよりかは、むしろボウイの新しい可能性を切り開こうとした野心作だという評価を与える方が妥当だろう。
というか、1975年の作品「Young Americans」以来彼が取り組んできたソウル/ファンクとロックの融合、そして「Outside」でのインダストリアルや「Earthling」でのドラムンベースなど、90年代以降彼が積極的に挑戦して結局消化不良に終わっていた、新しいジャンルとボウイ音楽との有機的な融合とも言うべき取り組みが20年以上の時を経てついに結実した、彼にとっては会心の出来の作品だったのかもしれないと今となっては思う。
ケンドリック・ラマーやフランク・オーシャンといった当時最先端のミュージシャンたちとのリンクも感じさせる今作。70年代には音楽界の最先端に立ってシーンを先導し、80~90年代と不遇の時代を過ごしたボウイであったが、最後の最後になって再び、シーンを先導する存在となったのだ。だが、「時代がボウイに追いついた」というキャッチフレーズはもう使うことができない。本当にズルい人である。