The Cure : 全アルバムレビュー(1979〜1982)
こんにちは。
今年の夏、初めてのフジロックに行きます。めちゃウキウキしています。
基本的に僕はフェスの前には、出演者のことは知らなくても予習しない派の人間なのですが、今回3日目のトリを飾るThe Cureに関しては、前から機会があればしっかり聴いてみたい!って思っていたのもあったので、今回こういった企画を立ち上げて聴き込んでいく事にしました!
フジに行く人にとっても、行かない人にとっても、役に立つ記事になれば幸いです…。それではいきましょう。
1. Three Imaginary Boys (1979)
彼らの記念すべきファーストアルバムが、この「Three Imaginary Boys」である。(初期の超有名曲「Boys Don't Cry」はここには収録されていないので注意)
「当時は何も分からずプロデューサーの言いなりで、思い描くような作品を作ることができなかった」
とロバート・スミスが後年語っているように、収録曲の多くはこの時期ありふれていたポスト・パンク調の曲で占められており、クオリティ面から見てみても将来スタジアム級のモンスターバンドになり得るような要素は感じられないというのが正直なところ。
「Subway Song」での金切り声なんか、夜1人で聴くとなかなか背筋が凍るのではないだろうか。
少し不快な気持ちになると同時に、ああこれがキュアーのスタイルなんだなと妙に納得してしまう。(これを聴いて気持ちよくなってくる頃には、もう彼らの音楽の虜になっているということなのだろう)
2. Seventeen Seconds (1980)
1st発売の2年後、彼らは2枚目の作品「Seventeen Seconds」を発表した。
そしてそれは、比較的ポップな曲が揃っていた前作に比べると、打ち込みのようなドラムビートが象徴しているように、圧倒的にミニマル・無機質・幻想的な作品に仕上がっていた。
これらはのちの作品にも一部受け継がれている要素であり、この作品をもってしてThe Cureの基礎となるものは完成したといってもいいだろう。
ただ正直にいってしまうと、あまりにもミニマリズムを突き詰めたがあまり、作中に印象に残るような曲が少ないのが弱点でもある。
ヒットシングル「A Forest」に到るまでの流れには目を見張るものがあるが、逆にいうとこの曲くらいしか頭に残る曲がないのも事実だ。(「Play For Today」や「M」など、ライブの定番曲にもなっている名曲もあるっちゃあるが)
3. Faith (1981)
1981年発表のサードアルバム「Faith」は、前作の方向性を煮詰めて、さらに発展させた作品となった。
基本的には3ピースバンドとしての音を大事にしながらも(特にベースの音が極端にデカイ!)、要所要所でのキーボードの使い方が前作に比べて上手くなっている。
「The Funeral Party」での空間を埋め尽くすようなシンセの音はJoy Divisionにも通じるものがあり、まさに葬式のような神聖な雰囲気を醸し出している。
実際、この頃はメンバーの家族の死が相次いでいたらしく、その出来事が今作の作風にも影響を及ぼしているのかもしれない。
死に対する行き場のない感情、初期のキュアー作品に通底する重要なテーマであると僕は思っている。
曲自体もポップソングとまでは言えないものの、印象的なソングラインを持つ耳に残る曲が多く、その点でも彼らのバンドとしての進化を感じる。
全てのゴス系バンドはこの頃の彼らをお手本にするべきではないだろうか、そんな感情さえも浮かんでくる。
初期の傑作として数えられることも多い今作は特に有名なシングル曲を擁している訳ではないが、聴きごたえのある良作と言い切ってしまおう。おススメです。
次の作品に行く前に、ちょうどこの2作の間の頃に発表された傑作シングル「Charlotte Sometimes」を紹介したいと思う。
キャッチーとは言えないまでも、妖しい魅力を放つメロディや、壁のように立ちはだかる厳かなシンセの音、美意識マシマシのMVも含めて全てが美しい、所謂ゴス系の曲としてはほとんど完璧な曲であると思っている。
だが、彼らのゴス路線はこのシングルで一旦終わりを迎えることとなる。次作でもこの作風が継続されるのだろうと思いきや、彼らは異形の怪物へと変貌を遂げてしまうのである。
4. Pornography (1982)
1982年発表の4作目。のちに「暗黒三部作」のひとつとして知られることになる名盤。
冒頭の「One Hundred Years」で顕著に表れているように、今作の特徴は異様なまでにダークでヘヴィーなサイケデリック・サウンド。熱があったりする時に聴くと、本当にトリップしてしまいそうな気がする。
また全編を通じて鳴り響く、タムを効果的に用いた民族的なドラム・サウンドによって極度なまでの緊張感が作品全体に張り詰めている。
ロバート・スミスのボーカルも何かに追われているような焦躁感を感じさせるもので、今作における異様なムードに拍車をかけている。
実際、制作中のメンバー間における関係も最悪なものだったらしい。
最終的にベースのサイモン・ギャラップは今作のツアー中に脱退、それを受けてかロバートもキュアーの解散宣言を出すという結果になってしまった。
そんな曰く付きの作品である「Pornography」であるが、例えばDavid Bowieの「Low」だとか、NINの「The Downward Spiral」のような、他との替えがきかないような特別なポジションに存在する魅力的な作品であると思う。ハマる人にはとことんハマるものだろう。
同時に、キュアーのバンド史の中でも確実に避けて通ることのできない重要作でもある。
この作品からキュアー入門することは決して勧めないが、彼らの音楽を理解する上では絶対に聴くべき作品だろう。
次回に続きます…。