SMALL TALK

small talk : 世間話、雑談

ビリー・アイリッシュの世界 Part. 2

こんにちは。

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長いこと待ってました、とうとうかといった感じです。

Billie Eilishの待望のデビューアルバム「WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?」が3/29に発売されることが発表されました!!!やったね!!!

 

ちょうど1年前くらいに彼女の存在を知ってから、そのユニークな世界観と素晴らしい楽曲にどハマり。

コンスタントに発表されるシングルの数々に満足しながらも、やっぱりアルバムという形で彼女を体感したいなあと心のどこかで感じてはいましたが…。ようやくですね。当事者でもないのに謎の達成感を感じております。

 

ところで、去年に僕はこんな感じの記事を書いたのですが、

green-david0705.hatenablog.com

個人的にこの記事はこれからビリーの曲を聴いてみようかなって思っている人には絶対読んでもらいたいなと思っているテキストなんですが、 これが公開されてから現在までの半年(去年の7月〜今年の1月)の間にも彼女は新しい作品を発表し続けているんですね。

紹介しないにはあまりにも惜しい作品ばかりなので、ちょっと今回の記事で補足みたいな感じでちょこちょこ書いていけたらなと思います。ぜひ前回の記事と合わせてお読みください。

 

 

1. you should see me in a crown

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去年の7月に配信されたこの「you should see me in a crown」は、これまでの彼女の曲に無かったようなダンサブルで激しい性格を持つ曲となっている。

「dont smile at me」期から「lovely」の頃までの彼女は、ラナ・デル・レイの妹分みたいな印象のポップソングを多く発表していたが、このシングルを発表した頃から作風が以前よりも少しヒップホップ寄りに変わってきたように思える。

歌声も、かつての少女のような透き通る声から情念のこもっている深みの増した声になっているようである。

ビリーのキャリアを振り返る上で、ひとつのターニングポイントとして記憶される曲だろう。まあ、実を言うとここから彼女の音楽性は驚くほどの速さで成長を遂げていくのだが…。

 

曲のタイトルはBBCの人気ドラマ「SHERLOCK」 に登場するキャラクター、モリアーティの劇中での発言から引用している。

ベネディクト・カンバーバッチ演じるシャーロックに「蜘蛛のような存在」とも称される彼。

そして蜘蛛は「you should see me in a crown」における主要なモチーフである。

モリアーティの存在はこの曲における最重要のインスピレーション源と言って間違いないだろう。

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「And honey you should see me in a crown...」なんちゅうかっこいいセリフだ。

 

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「エレンの部屋」でのパフォーマンス。

完全にモリアーティになりきっているビリー。こういう風に音楽以外のポップカルチャーともシームレスなつながりを見せてくれるところが好き。

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2. when the party's over

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ピアノとヴォーカルだけという最小限の構成ながら、超低音からファルセットまでの音域を自在に操る彼女のズバ抜けた歌唱力のお陰で感動的なバラードに仕上がっている。

全米チャート上の最高位は52位と地味ではあるが、100位以内にしぶとくチャートインし続けロングヒットを記録し、彼女の代表曲のひとつとなった曲である。

その証拠に、BBC Radio 1の企画でBring Me The Horizonがこの曲のカヴァーを披露している。

(このBBCのカヴァー企画では、Dua Lipaの「One Kiss」やArianaの「thank u, next」などある程度のヒット曲・有名曲でないと取り上げられることはまず無いので、この企画で取り上げられた曲=誰もが認めるヒット曲と見なすことが出来る)

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歌詞は孤独や不安、やり切れなさについて書かれたもので、これらはビリーのその他の作品でも主題とされているテーマである。

そんな彼女らしさがはっきりと表れた曲がヒットしたということは、彼女のキャラクターや音楽に共感する病める若者が世界中にはたくさんいる、ということを意味している。

この状況は決していいものでは無いだろうが、彼女の今後の成功を約束する要素であることは確かである…。

 

 

 

 

3. come out and play

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ホリデーシーズンに配信されたシングル。大した予告も無しに突然発表されたので、当時は驚いた記憶がある。

日本でもAppleのCMに大々的に使われていたので聴いたことのある人は多いかもしれない。

初めて見たときは「ついにビリー・アイリッシュの曲がお茶の間で流れる日が来たのか…」と謎に感動したなあ。(その割には周りの人たちの反応はめちゃ薄かったけど。トホホ)

いつもの彼女の曲らしからぬ、勇気づけられるような内容の歌詞である。

心がじんわり暖かくなる、癒されたい気分の時に聴きたくなる曲。なんでデビューアルバムに収録されないんだよお…

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曲を作るときの彼女は、この曲の歌詞に描かれているような気持ちになるのだろうか。気になる。

 

 

 

 

 

4. WHEN I WAS OLDER

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2019年の第一弾シングルとして発表された曲がこの「WHEN I WAS OLDER」である。

Netflix制作の映画「ROMA」にインスピレーションを受けて作られた曲だそうだ。

残念ながら筆者はこの映画を見ていないため、関連付けたレビューというのはできない。(観た後で何か記しておくべきトピックスがあれば、後日加筆修正をしたいと思う。)

だが、音楽的な観点から言うと、これは彼女のキャリアの中でもかなり大きなターニングポイントとなるであろう曲だと言うことが出来る。

最新鋭のヒップホップに大きく影響を受けたであろうシンプルなトラックメイキングとビート、そして彼女のキャリアで初めて取り入れられたオートチューンがこの楽曲のミステリアスな魅力をより一層引き立てている。

あと、途中で入るリコーダー?っぽい笛の音が少しFutureの「Mask Off」を連想させるところもミソである。

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半年の間でここまでの成長を遂げるなんて…。 はっきり言って異常である。

 

 

 

 

 

5. bury a friend

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そしてこれが、つい1週間前に発表された彼女の最新シングル。

そして同時に、来たるデビュー作「WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?」のリードトラックでもある。前のシングル「WHEN I WAS OLDER」の流れを汲んだ、ビートと最小限のウワモノで構成されたシンプルな、しかしポップスとしてはいささかストレンジな曲調に仕上がっているのが特徴。

 

ビリー曰く、この曲の歌詞はベッドの下に潜んでいるモンスターの視点で書かれたものだそう。

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同じような話で、海外の民間伝承にブギーマン伝説というものがある。ベッドの下などから現れ、子供に色んな悪さをする怪物だそうだ。

そしてこのブギーマン、特定の姿かたちを持たず、ただ単に不定形の恐怖が具現化したものであるというのだ。

みなさんにも同じような経験が無いだろうか。子供の頃、夜に理由もなく家の中や自分の部屋で恐怖を感じたり…。それこそがブギーマンの正体なのである。安心してください、もう怖がることは無いですよ。

すなわち、ビリーがこの曲の歌詞で言及している「モンスター」というのは自分自身の中に存在する恐怖心、つまり「モンスター」=「自分自身」であると考えることが出来るだろう。

そんなモンスターを、曲中では「friend」という言葉で置き換えて葬ろうとしている。おどろおどろしいタイトルにはこんな意味が隠されていたのである。

その証拠に、MVではビリー自身が「モンスター」を、少しホラーっぽい雰囲気で演じている。

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上に貼ったMVでの1シーンを見てもらうと分かるように、「when the party’s over」で出てきた黒い液体がここでも再登場する。

これは先程出てきた「恐怖心」の事を示唆していると考えるのが妥当かな。いつも彼女が取り上げているテーマですね。

このように、曲調は変わっても根底に流れるテーマは不変なのである。売れても軸はブレない。そういう姿勢が若者の共感を生むのではないだろうか。

 

そしてこの「bury a friend」、チャートアクションも凄まじいことになっていて、世界中で本当に人気のあるミュージシャンしかランクインしない事で有名なSpotifyのチャート「Global Top 50」においてAriana Grandeの「7 rings」に続いて2位にランクインしているのである!(2/6時点)

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今のAriのポップス界での勢いや不動の地位を考えると、この成績というのはちょっと考えられないくらい凄い数字であることは明らかだろう。Post Maloneよりも上ってのもまたね…。

この調子だと3月に出るデビュー作は間違いなく流行りまくるだろうし、もしかすると2019年のポップス界におけるゲームチェンジャーになってしまうかもしれない。今後の彼女の展開に注目しない手はないだろう。

 

 

 

 

というわけで一通りの紹介はこんな感じ。今の彼女の持つ勢いがどれほどのものなのか分かっていただけたらと思います。

今年か来年あたり、どこかのタイミングで来日してくれることを切に祈っておりますが、去年のサマソニでの冷めたオーディエンスの様子がヒップホップ畑で育った彼女の目に果たしてどう映ったのか。それがひとつ心配ではありますね。杞憂に終わるといいのですが…。