SMALL TALK

small talk : 世間話、雑談

ポール・マッカートニー 全アルバムレビュー [70年代編・その①]

こんにちは。

 

突然ですが、来月の11/8にナゴヤドームで行われるポール・マッカートニーのライブに筆者も参加することになりました(^^) ロック界屈指のレジェンドを生で見ることができるなんて… 嬉しすぎます…!

まあチケットの高さにはマジでビビりましたけどね。アメリカで見たU2のチケットよりも高くて、しかも席もめっちゃ後ろの方っていうのは端的にいって異常ですわ。まあ参加することに意義があるのかな…。

というわけで、高額なチケット代のこともあるのでちゃんとライブ前に予習していこうと思い立ったわけです。

で、その時に初めて気づいたのは、自分は意外とポールのソロ作を聴いてないんだなということ。ビートルズ時代の曲はまあまあ知ってるんですけどね。

なので今回、せっかくの機会なので彼のオリジナルアルバム全作品を、初ソロ作の「McCartney」から最新作の「Egypt Station」まで総ざらいして、ついでにこのブログ上で何回かの記事に分けて短めのレビューも書いていくことにしました。(もちろんウイングス時代を含めて) ベストアルバムだけ聴いて済ませるのはなんかもったいない気がしたんですよね。

 レビュー第1回目の今回は、「McCartney」〜「Wild Life」までの短めのレビューを書いていこうと思います。

 

 [目次]

 

 

1. McCartney (1970)

f:id:green-david:20181009111010j:plain

1970年4月にリリースされたポールのソロ名義最初の作品。

この前年の9月にジョン・レノンビートルズを事実上の脱退、この出来事によってビートルズは解散状態となる。ショックを受けたポールはスコットランドの自宅農場に引きこもってしまう。話によるとこの頃のポールは一日中ベッドに横たわり、髭も剃らず酒やクスリに溺れるほとんど廃人のような生活を送っていたそうだ。しばらくして妻リンダの支えもあって立ち直ったポールは、このソロデビュー作の制作を開始した。

 

収録曲のほとんどはポールの自宅で録音されたもので、今でいう宅録の先駆け的な作品とも言えるだろう。 もちろん全ての楽器がポール1人の手によって演奏されており、彼のマルチプレイヤーとしての多才ぶりも今作では楽しむことができる。「Momma Miss America」での1人セッションは聴きどころのひとつだろう。特にドラムプレイはビートルズ時代も度々披露していたが、リンゴのプレイとはまた違った独特のノリがあって魅力的であると個人的には思う。ホント才能の塊ですねこの人は。

あと言及しなくてはならないのは、アルバム全体を覆うリラックスしたムード。良く言えば素朴な、スタジオでの録音風景を覗いているようなアットホームな雰囲気だが、逆に手抜きだと言うことも出来る。同時期にリリースされた、ビートルズの他の3人のソロ作がいずれも気合の入った力作ぞろいだったため余計にそう感じる人もいたのだろう。

だが、リラックスしたムードで進んでいくこの作品の実質的なフィナーレを飾る曲「Maybe I'm Amazed」だけは、他の曲とは雰囲気の違う際立った曲になっている。

www.youtube.com

ビートルズという大きな柱が無くなってしまった時に彼を支えてくれたリンダに向けた美しすぎるラブソング。メロディーの構造自体はシンプルなのにどうしてこんな感動的な名曲に仕上がるのだろうか…?本当に不思議である。

この「McCartney」、ポール初心者には少々とっつきにくいこともあるのでオススメはできないが、彼のキャリアを振り返る上では避けて通れないアルバムである事は間違いないだろう。

 

 

2. RAM (1971)

f:id:green-david:20181010172800j:plain

前作から約1年後にリリースされたのがこの「RAM」。彼のキャリア中でなぜかこの作品だけポール&リンダ・マッカートニー名義。

少々ラフになりすぎた前作の反省を生かしてか、複数のスタジオミュージシャンを招集しての録音になっている。 でもやっぱりラフな感じはまだ残ってるのはなぜだろう?農場で演奏してそうな雰囲気をどうしても感じてしまうのは、羊ジャケによる先入観だろうか。

とは言っても全曲雑な感じなのかと言われればそうではない。ざっと挙げてみると「Too Many People」「Dear Boy」「Uncle Albert」「The Back Seat of My Car」といった曲群はアレンジも含め良く練られた完成度の高い、ビートルズ時代のポールっぽい雰囲気を持った曲だと言えるだろう。初心者がもしこの「RAM」を手に取ることがあったならさっき挙げた曲の中から聴いてみると良さそう。

ひとつ気になるのが、このアルバムの中で結構ポール、ビートルズの他の3人への愚痴をぶっちゃけてしまっているところ。なんでも「3 Legs」は彼らのことを指してるそうな。まあポールは最後の方はバンド内で孤立していたらしいし気持ちは分からなくもないが…。

このdisに腹を立てたジョンは同年発表のアルバム「Imagine」に収録された曲「How Do You Sleep?」にてポールに対するかなり激しいdisを展開している。詳しくはこちらをご参照くだされ。

何もここまでやり返さなくても…とも思う。2人の性格の違いを良く表しているエピソードですねえ…。

 

 

3. Wild Life (1971)

f:id:green-david:20181011202411j:plain

ソロキャリアを始めてから2枚のアルバムを発表したポールは新たにウイングスという名のバンドを結成。かつてのようなバンド活動が恋しくなったのだろうか?

そのウイングスのデビュー作がこの「Wild Life」なのだが、録音に要した期間がたったの二週間という、言ってみればウイングスにとってのプリーズ・プリーズ・ミー的なアルバムになっているのがポイント。

録音期間の短さは荒削りな内容にも表れていて、そのせいで批評家からは「やっつけだ」との批判を集める結果となった。ウイングスの作品の中でもかなり目立たない位置付けに甘んじてしまっているわけである。

でもね、今回初めて聴いてみたわけなんですけど、僕めちゃくちゃ好きです、これ(笑) 

この作品、前半と後半で曲調がかなり変わる。A面はロックしてるというか、メロディーよりもバンドアンサンブルに重きを置いた感じ。確かに天性のメロディーメイカーであるポールらしくないっちゃあらしくないので、そういう点でウケが悪かったのかなあと思ったり。かといって前作みたいにポップな曲を作っても「シングル曲の寄せ集め」とかいって批判されるんだけど。なんなんだ批評家って。

2曲目の「Bip Bop」は半分ふざけたような雰囲気なんだけど、ポールのヴォーカルがファンキーでなぜかカッコ良さも感じるという不思議な曲。

4曲目の「Wild Life」は動物愛護を叫んだメッセージ性の強い曲で、のちにポールが厳格なヴィーガンとなることを示唆するような一曲となっている。

B面はメロディアスな曲が揃っており、もうさすがポールといった感じ。安心して聴けますね。イエスタデイと同じコード進行を使った「Tomorrow」が1番好きかな。

この「Wild Life」、世間で言われているほど悪くないしむしろ良い作品だと思うのでぜひ聴いてみてほしい。オススメです。

 

 

 

今回紹介した3作品、名付けてラフ三部作は「RAM」を除いて一般的な評価はあまり芳しくないし人気作とも言いづらいのだが、ポールとしては珍しい試行錯誤の跡が高い頻度で見受けられるし、直後に訪れる全盛期までの道のりを描いたドキュメントとしても聴く価値は十分にあるだろう。作品としても普通に聴いてて面白いしね。

これからポールのキャリアを勉強していきたい!という人も、最新作とか代表作を聴いた後で全然良いのでぜひぜひ聴いてみてくださいな。楽しいよ!

 

というわけで、70年代編・その②へ続きます…

green-david0705.hatenablog.com