SMALL TALK

small talk : 世間話、雑談

ビリー・アイリッシュの世界 Part. 2

こんにちは。

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長いこと待ってました、とうとうかといった感じです。

Billie Eilishの待望のデビューアルバム「WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?」が3/29に発売されることが発表されました!!!やったね!!!

 

ちょうど1年前くらいに彼女の存在を知ってから、そのユニークな世界観と素晴らしい楽曲にどハマり。

コンスタントに発表されるシングルの数々に満足しながらも、やっぱりアルバムという形で彼女を体感したいなあと心のどこかで感じてはいましたが…。ようやくですね。当事者でもないのに謎の達成感を感じております。

 

ところで、去年に僕はこんな感じの記事を書いたのですが、

green-david0705.hatenablog.com

個人的にこの記事はこれからビリーの曲を聴いてみようかなって思っている人には絶対読んでもらいたいなと思っているテキストなんですが、 これが公開されてから現在までの半年(去年の7月〜今年の1月)の間にも彼女は新しい作品を発表し続けているんですね。

紹介しないにはあまりにも惜しい作品ばかりなので、ちょっと今回の記事で補足みたいな感じでちょこちょこ書いていけたらなと思います。ぜひ前回の記事と合わせてお読みください。

 

 

1. you should see me in a crown

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去年の7月に配信されたこの「you should see me in a crown」は、これまでの彼女の曲に無かったようなダンサブルで激しい性格を持つ曲となっている。

「dont smile at me」期から「lovely」の頃までの彼女は、ラナ・デル・レイの妹分みたいな印象のポップソングを多く発表していたが、このシングルを発表した頃から作風が以前よりも少しヒップホップ寄りに変わってきたように思える。

歌声も、かつての少女のような透き通る声から情念のこもっている深みの増した声になっているようである。

ビリーのキャリアを振り返る上で、ひとつのターニングポイントとして記憶される曲だろう。まあ、実を言うとここから彼女の音楽性は驚くほどの速さで成長を遂げていくのだが…。

 

曲のタイトルはBBCの人気ドラマ「SHERLOCK」 に登場するキャラクター、モリアーティの劇中での発言から引用している。

ベネディクト・カンバーバッチ演じるシャーロックに「蜘蛛のような存在」とも称される彼。

そして蜘蛛は「you should see me in a crown」における主要なモチーフである。

モリアーティの存在はこの曲における最重要のインスピレーション源と言って間違いないだろう。

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「And honey you should see me in a crown...」なんちゅうかっこいいセリフだ。

 

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「エレンの部屋」でのパフォーマンス。

完全にモリアーティになりきっているビリー。こういう風に音楽以外のポップカルチャーともシームレスなつながりを見せてくれるところが好き。

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2. when the party's over

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ピアノとヴォーカルだけという最小限の構成ながら、超低音からファルセットまでの音域を自在に操る彼女のズバ抜けた歌唱力のお陰で感動的なバラードに仕上がっている。

全米チャート上の最高位は52位と地味ではあるが、100位以内にしぶとくチャートインし続けロングヒットを記録し、彼女の代表曲のひとつとなった曲である。

その証拠に、BBC Radio 1の企画でBring Me The Horizonがこの曲のカヴァーを披露している。

(このBBCのカヴァー企画では、Dua Lipaの「One Kiss」やArianaの「thank u, next」などある程度のヒット曲・有名曲でないと取り上げられることはまず無いので、この企画で取り上げられた曲=誰もが認めるヒット曲と見なすことが出来る)

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歌詞は孤独や不安、やり切れなさについて書かれたもので、これらはビリーのその他の作品でも主題とされているテーマである。

そんな彼女らしさがはっきりと表れた曲がヒットしたということは、彼女のキャラクターや音楽に共感する病める若者が世界中にはたくさんいる、ということを意味している。

この状況は決していいものでは無いだろうが、彼女の今後の成功を約束する要素であることは確かである…。

 

 

 

 

3. come out and play

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ホリデーシーズンに配信されたシングル。大した予告も無しに突然発表されたので、当時は驚いた記憶がある。

日本でもAppleのCMに大々的に使われていたので聴いたことのある人は多いかもしれない。

初めて見たときは「ついにビリー・アイリッシュの曲がお茶の間で流れる日が来たのか…」と謎に感動したなあ。(その割には周りの人たちの反応はめちゃ薄かったけど。トホホ)

いつもの彼女の曲らしからぬ、勇気づけられるような内容の歌詞である。

心がじんわり暖かくなる、癒されたい気分の時に聴きたくなる曲。なんでデビューアルバムに収録されないんだよお…

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曲を作るときの彼女は、この曲の歌詞に描かれているような気持ちになるのだろうか。気になる。

 

 

 

 

 

4. WHEN I WAS OLDER

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2019年の第一弾シングルとして発表された曲がこの「WHEN I WAS OLDER」である。

Netflix制作の映画「ROMA」にインスピレーションを受けて作られた曲だそうだ。

残念ながら筆者はこの映画を見ていないため、関連付けたレビューというのはできない。(観た後で何か記しておくべきトピックスがあれば、後日加筆修正をしたいと思う。)

だが、音楽的な観点から言うと、これは彼女のキャリアの中でもかなり大きなターニングポイントとなるであろう曲だと言うことが出来る。

最新鋭のヒップホップに大きく影響を受けたであろうシンプルなトラックメイキングとビート、そして彼女のキャリアで初めて取り入れられたオートチューンがこの楽曲のミステリアスな魅力をより一層引き立てている。

あと、途中で入るリコーダー?っぽい笛の音が少しFutureの「Mask Off」を連想させるところもミソである。

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半年の間でここまでの成長を遂げるなんて…。 はっきり言って異常である。

 

 

 

 

 

5. bury a friend

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そしてこれが、つい1週間前に発表された彼女の最新シングル。

そして同時に、来たるデビュー作「WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?」のリードトラックでもある。前のシングル「WHEN I WAS OLDER」の流れを汲んだ、ビートと最小限のウワモノで構成されたシンプルな、しかしポップスとしてはいささかストレンジな曲調に仕上がっているのが特徴。

 

ビリー曰く、この曲の歌詞はベッドの下に潜んでいるモンスターの視点で書かれたものだそう。

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同じような話で、海外の民間伝承にブギーマン伝説というものがある。ベッドの下などから現れ、子供に色んな悪さをする怪物だそうだ。

そしてこのブギーマン、特定の姿かたちを持たず、ただ単に不定形の恐怖が具現化したものであるというのだ。

みなさんにも同じような経験が無いだろうか。子供の頃、夜に理由もなく家の中や自分の部屋で恐怖を感じたり…。それこそがブギーマンの正体なのである。安心してください、もう怖がることは無いですよ。

すなわち、ビリーがこの曲の歌詞で言及している「モンスター」というのは自分自身の中に存在する恐怖心、つまり「モンスター」=「自分自身」であると考えることが出来るだろう。

そんなモンスターを、曲中では「friend」という言葉で置き換えて葬ろうとしている。おどろおどろしいタイトルにはこんな意味が隠されていたのである。

その証拠に、MVではビリー自身が「モンスター」を、少しホラーっぽい雰囲気で演じている。

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上に貼ったMVでの1シーンを見てもらうと分かるように、「when the party’s over」で出てきた黒い液体がここでも再登場する。

これは先程出てきた「恐怖心」の事を示唆していると考えるのが妥当かな。いつも彼女が取り上げているテーマですね。

このように、曲調は変わっても根底に流れるテーマは不変なのである。売れても軸はブレない。そういう姿勢が若者の共感を生むのではないだろうか。

 

そしてこの「bury a friend」、チャートアクションも凄まじいことになっていて、世界中で本当に人気のあるミュージシャンしかランクインしない事で有名なSpotifyのチャート「Global Top 50」においてAriana Grandeの「7 rings」に続いて2位にランクインしているのである!(2/6時点)

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今のAriのポップス界での勢いや不動の地位を考えると、この成績というのはちょっと考えられないくらい凄い数字であることは明らかだろう。Post Maloneよりも上ってのもまたね…。

この調子だと3月に出るデビュー作は間違いなく流行りまくるだろうし、もしかすると2019年のポップス界におけるゲームチェンジャーになってしまうかもしれない。今後の彼女の展開に注目しない手はないだろう。

 

 

 

 

というわけで一通りの紹介はこんな感じ。今の彼女の持つ勢いがどれほどのものなのか分かっていただけたらと思います。

今年か来年あたり、どこかのタイミングで来日してくれることを切に祈っておりますが、去年のサマソニでの冷めたオーディエンスの様子がヒップホップ畑で育った彼女の目に果たしてどう映ったのか。それがひとつ心配ではありますね。杞憂に終わるといいのですが…。

 

 

デヴィッド・ボウイと僕

あけましておめでとうございます。

今年もマイペースに更新していきたいと思ってますので、よければお付き合いくださいな。

 

 

ところで、今日1月8日はデヴィッド・ボウイの72回目の誕生日。

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デヴィッド・ボウイは僕にとって特別なアーティストである。

そのビジュアルや彼の創り出す音楽など、すべての要素が僕に影響を与え、今現在の僕を形成している。

高校生だった3年間はほとんどボウイ漬けと言っても過言では無い日々を過ごした。この多感な時期に、彼が僕に与えた影響は計り知れないものがある。

高校入学と同時に突然現れ、その終わりと同時に突然消えていったボウイ。彼ほど特別な存在はもしかすると今後の人生でも現れないかもしれない。

 

僕の中でボウイがここまで大きな存在になった理由は一体なんなのだろうか?

そのひとつとして、彼が創り出す世界の奥深さがある。ボウイは好奇心旺盛な人として知られていて、彼が関心を寄せる事象は音楽や絵画の分野にとどまることなく、書籍や黒魔術の分野、ついには量子物理学にまで至ってしまうほど多岐に渡るのである。

そういった様々な分野から影響を受けて創作されるボウイの作品は当然のように奥が深く、受け取る側も相応の知識量をもって考察することが要求される。もしかすると論文のひとつでも書けてしまうかもしれないくらい難解なのだ。

だが反面、その謎解きの過程は大変興味深い発見も多々あり、また知的好奇心をくすぐられるものでもある。

このようなボウイ考察の面白みに気付かされたきっかけは、「デヴィッド・ボウイ詩集ースピード・オヴ・ライフ」という1冊の本に出会ったことがきっかけである。(現在は絶版)

ci.nii.ac.jp

(どうやら、CiNiiによると国内のいくつかの図書館で閲覧ができるそうです。興味がある方は絶対に読んでおいたほうがいいと思います。)

 著者である古川貴之氏による、原詩から忠実に翻訳された訳詞とアルバム・曲ごとの丁寧かつ大胆な考察に完全に魅了されてしまった僕は、いつかボウイのことをある程度理解できる頃になったら、自分なりのボウイ考察をなんらかの形でまとめてみたいと決意したのであった。

 

そして現在、僕は大学生である。まあまあ自由な時間はあるし、諸先輩方ほどでは無いにしろボウイに関する知識も身についたと思う。

ならば今しかないということで、これからこのブログ上で「ボウイ考察シリーズ」と銘打って論を展開していこうと考えたわけである。

こんな大げさな題名をつけている割には、文章は未熟になってしまうだろうし考察も浅いところがあるかもしれないが、自分も持てる力を精一杯振り絞って書いていくつもりです。

 

 

今回はこんな感じで自分語り&所信表明的な記事になってしまいました。

では、また日を改めて第1弾の記事を投下していきたいと思います。(しばらく後になりそうですが…苦笑)

マイ・フェイバリット・シングス(2018年・総括編)

こんにちは。

 

もう2018年も終わりということで、各メディアに加え一般の人々も続々と年間ベストを発表してますね。

というわけで、自分も今年の気に入った音楽を個人的に総括してみたいなと思います。

 

 

 

 

印象に残ったアルバム

去年までは年間ベストアルバムを選定してたんですけど、今年はやらないことにしました。実を言うと、年間ベストを選定できるほどたくさんのアルバムを聴いていないんですよね…。(笑)  

だけど、繰り返し聴いた愛聴盤だったり、印象に残った作品というのはもちろん存在します。今回はそれを紹介していこうかな。

まずはサニーデイ・サービスの「the CITY」について。

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この作品は確か3月にリリースされたと思うんだけど、彼らのライブを観る予定もあったので何回も繰り返し聴いた。

でも笑っちゃうくらい、とにかく難解すぎて…。分からないからこそ、何回も繰り返し聴いたのかもしれないな。シングルカットできそうな大衆向けの曲なんか皆無なんですよ?ホントに。

そうやって繰り返し聴いていくうちに気づいたのが、この作品は出来がどうこうというより、「the CITY」というタイトル通り、僕たちが住む街での日々の暮らしに溶け込むような作品だなということ。

かなり実験的でアヴァンギャルドなのに、驚くほど自然に自分の生活に染み込んででいったのである。

正直賛否はかなり別れるだろうし、どっちかといえば「賛」の立場である僕からしてみても、「DANCE TO YOU」などの過去作と比べても「素晴らしい!」と声を張って言えるような作品ではないものの、なぜか繰り返し聴いてしまう、そんな不思議な作品である。

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そうそう、サニーデイといえば、12月に出た曽我部恵一のソロ作もすごくよかった。

今回は全編ラップ作品。安易に流行を追わず、曽我部流のコラージュサウンドが鳴り響く点がGOOD。最近の愛聴盤である。

ここ最近のサニーデイというか曽我部恵一はすごくクオリティの高い、才気のほとばしるような作品を間髪入れずにリリースするので、フォローしていく作業は大変ではあるもののとても楽しい。

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あとは宇多田ヒカルの「初恋」も素晴らしかった。

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ジャケット写真の印象が強すぎるのは置いといて、人間活動後の宇多田ヒカルの勢いは文字通り神がかっていると思う。

前作「Fantôme」が死のにおいが立ち込める、緊迫した雰囲気の作品だとするならば、この「初恋」は生きることの喜びを謳歌しているかのような、のびのびとした雰囲気の作品であるように思える。

だが、繊細なコーラスワークや魂に直接訴えかけてくるような歌声など、末恐ろしくなるほどの完成度の高さは前作と変わらないどころか、より高い次元に到達しているとも感じる。(正直、晩年のボウイ作品を彷彿とさせるレベルの完成度だなと感じた。こんなこと書くと怒られるかな)

今年出た作品の中では1番気に入っているかもしれない。すごいなあ〜。

 

他によく聴いた作品といえば、

カニエ・ウエストの作品群(収録時間が短いので聴きやすかった)、Justin Timberlakeの新譜(自分以外に褒めてる人があんまいないけどいい作品なのでみんなにも聴いてほしい)、それとMGMTの新譜もポップでよかったなあ。

あと、これは新譜ではないけれど、ポール・マッカートニーの来日公演に行くにあたって、彼のソロやビートルズの作品を聴き倒していたのだが、当たり前というべきか本当に素晴らしく、改めて彼らの功績を深く実感する結果となった。普遍ですね。

 

 

年間ベストソング・トップ10

2018年の僕は「アルバム」よりも「曲」というフォーマットに重きを置いて音楽を聴いていた気がします。

というわけで、例年のようにベストアルバムを決められない代わりに、曲の方はリストを作成することができたのでちょっと見てみてください。結構いい感じです。

 

以下順不同。

 

1. Love It If We Made It / The 1975

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詳しい感想は記事にて。

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本当に素晴らしい曲。アルバム出すたびに最高値を更新してくれる彼らのことが大好きです。

 

2. The Tide / Pale Waves

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今年の個人的・新人賞を獲得したPale Waves

思い入れのある曲が多すぎて何を選ぼうか迷いに迷った末、この「The Tide」を選ぶことにした。「Noises」も「One More Time」もいいんだけど、ハマるきっかけになったのはやっぱりコレなんだよな。そういう意味でも特別。

 

3. Nice For What / Drake

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今年のチャート上での主役は完全にDrakeだった。

毎週全米チャートの1位を確認するたびに「まーたドレイクのGod's Planかよ〜!」とあきれ返る状態が1ヶ月くらい続いた。歴史上でもあまり類をみない出来事だったと思う。アルバムもバカ売れしてたなあ。

でも僕が彼の今年出した曲の中で1番好きなのは、「God's Plan」ではなくこの「Nice For What」。

軽快なビートと彼の代名詞でもある歌うようなラップ、そしてローリン・ヒルの名曲「Ex-Factor」という大ネタの力も借りて、全米のトップにふさわしいまさに王者の風格漂うクラシックがここに完成した。踊らずにはいられない!

 

4. lovely (with Khalid)

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ビリーにも2018年の個人的・新人賞をあげたい。

彼女について取り上げた記事がとんでもないアクセス数を記録してしまって、そのことについても勝手に感謝している。

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アメリカ滞在中、テレビを見ていた時にたまたま目にしたのが全ての始まりだった。こういう偶然の出会いがたまにあるから、音楽リスナーはやめられないのだ。来年もこういう出会いがありますように。

 

5. 誓い / 宇多田ヒカル

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宇多田の新譜からは必ず選出しようと思っていたのだが、どの曲を選び出すべきか…。ものすごく迷った。タイトル曲の脆い雰囲気が本当に好きだし、「Forevermore」の力強さも捨てがたい。「Good Night」「残り香」も聴くたびにたまらない気持ちになる。

で、最終的に選んだのは「誓い」だった。まず、何ですかこのリズムは。およそポップスに似つかわしくない、「ノレない」リズムパターンである。

でも、これがクセになるんだよなあ…。クリス・デイヴがいたからこそ成せた技なのかも。何回聴いても魅力の色あせない名曲。

 

6. no tears left to cry / Ariana Grande

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アリアナの新作はかなり出来が良くて、記事にしてしまうくらい気に入ったことを覚えている。各紙の年間ベストにもちょこちょこ顔を出しているようで嬉しい。(肝心の僕の記事は頑張って書いた割にはそんな読まれなかったが)

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やっぱこの曲は何回聴いてもいい!全てが完成され尽くされている、ポップスのお手本のような曲。

 

7. This is America / Childish Gambino

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2018年のポップスを振り返るにあたって、表の王者がDrakeなら、ウラの王者はこのChildish Gambinoなのではないか?ネットミームにもなり、数字に見えないところで様々な影響を与えた、2018年を語る上で欠かすことのできない1曲であると思う。

テスト直前に、深夜のマックのBGMでこれを繰り返し聴かされてノイローゼになったのもいい思い出である…(それが理由で選んだわけじゃないよ)

 

8. Four Out Of Five / Arctic Monkeys

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The 1975の新作のせいで完全に影が薄くなってしまった感のあるアークティックの新作。いや普通に出来も良かったんだけどな…。

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やっぱり何回聴いてもボウイだ。渋くてかっくいい〜!

 

9. All The Stars (with SZA) / Kendrick Lamar

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今年の新年早々に発表された時点で、これは年間ベスト級の曲だなと確信。思った通りでした…!

ブラックパンサーでもエンディングでかっこいい使われ方してて鳥肌が立ってしまったことをよく覚えている。COOLの塊のような曲。

 

10. アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先) / 小沢健二

2017年は小沢健二を聴きまくった年だったが、それは2018年の上半期も変わらなかった。個人的・年間ベストミュージシャン賞は今年もオザケンです。

生で彼のライブを見ることができたのも、今年のとても印象に残っている出来事のひとつである。冒頭この曲が演奏された瞬間に涙が溢れ出した理由は今でも分からないけれど、きっと言葉では説明できないようなことなんだろう。

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上にあげた9曲は(オザケンSpotifyにはないのでひとまず除外。みんなシングルを買って)プレイリストにまとめたので興味ある人は聴いてみてください。

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まとめ・総括

さっきも書いたように、今年は「曲」にフォーカスをして、音楽業界の最前線を必死に追いかけようとして音楽を聴いた1年だったなと感じる。

「アルバム」も聴いたことには聴いた。評判のいい、いわゆる名作とされる作品も多数産み出された1年であることは頭では分かっている。

けれど、毎週のように大量の新作が投下されていくストリーミングサービスの世界では、ひとつの作品を繰り返し聴いたりしてモタモタしているとすぐに取り残されてしまう。

キープアップしていくためにはどんどん切り捨てていかなくてはならず、その結果印象に残る「アルバム」作品が少なくなってしまったんだろう。

どうしたらひとつの作品を大事にできるだろう。今年の後半はそんなことばかり考えて過ごしていた気がする。今更CDを買うのもなあ…とも感じるし。来年には何か答えになりそうなものを見つけられたらなあと思う。

まあ、何はともあれ2018年もたくさんの素敵な音楽に出会えてよかった。本当にありがとう!

そして来年もいい音楽に出会えますように。

A Brief Inquiry Into Online Relationships / The 1975

こんにちは。

今回は、現在巷で話題のThe 1975の最新作について書いていこうと思います。

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1. The 1975

彼らの作品の冒頭を飾るのは決まってこの曲であり、今作でもそのルールは破られていない。

毎回アレンジが変わっていて、前作「君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。」ではゴスペル調のアレンジが施されていたが、今回はデジタル・クワイアを大々的に導入した作風となっている。

2016年にボン・イヴェールとフランシス・フェアウェル・スターライトが蒔いた種は、その後の音楽シーンにおいて着実に実っているようだ。

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2. Give Yourself Try

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Joy Divisionの「Disorder」のリフを大々的にフィーチャーした、このノリの良いポスト・パンクでアルバムは幕を開ける。ちなみにこのリフ、カッコいいくせにギターで超簡単に弾けるんですよね。嬉しい。

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最初の先行シングルとして公開された当初は、「今回のアルバムはパンクっぽくなるのかな〜」なんて思ったりしていたが、この自分の予想は大幅に覆されることとなるとは全く知る由もなかった…。

 

3. TOOTIMETOOTIMETOOTIME

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前作の「UGH!」を彷彿とさせる、彼ららしいオシャレなポップソング。

一貫してシリアスなムードが漂う今作中でも、安心して聴ける曲のひとつだと思う。つい最近まで流行っていたトロピカルハウスっぽい曲調なのも地味にポイント高いですね。

 

4. How To Draw / Petrichor

前半と後半パートで分かれている曲。

前半の「How To Draw」はまたもデジタル・クワイア全開の曲。マッティーの声質的にちょっとFrancis and the Lightsみたい。

そして僕は後半の「Petrichor」が好きなんです。Radioheadの「Idioteque」を思い出すような、ポストロック風味のダンスビートがたまらない!ライブとかで聴きたいなあ。

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5. Love It If We Made It

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先に言ってしまうと、この曲は今年のベストソングのひとつだと思う。本当に素晴らしい!

なんで僕がここまで言い切ってしまうのかというと、この曲から彼らの音楽に対する熱意がこれでもかという程伝わってくるから。

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上の画像はさっき貼ったこの曲のMVの最後に一瞬だけ出てくる画面のキャプチャだが、これを見ても分かる通り彼らはこの「Love It If We Made It」の歌詞やMVの中で世界中のさまざまな問題について言及している。

例を挙げると、エリック・ガーナーの窒息死事件難民問題・ネット上にはびこるトロールたち・フェイクニュース・Lil Peepの急逝など…。枚挙に遑がない。

特にアメリカのトップに立つあのマヌケ野郎についてはヴァース丸ごと使って言及しまくっている。

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 こうやってミュージシャンが曲にのせて自分たちの思いの丈を表現するアツい行動というのが僕は大好きなのだ。冷静に大人びたふりをしてピッチフォーク受けのいい曲を書いているような奴らたちとは違うのである。

 

7. Sincerity is Scary

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アコースティックバラードの「Be My Mistake」を挟んで繰り出されるこの曲は、前作で取り組んだゴスペル要素とヒップホップの影響色濃いビートが合体した作品となっている。

なんちゅう複雑なビートなんだ… これはライブで再現するの難しそうだなと思ってたけど、この動画見るとそうでもなさそう?てか楽しそうでいいな。

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ちなみにマッティーが上の動画の最後に追悼している人物であるRoy Hargroveはこの曲でトランペットを吹いているのだが、なんとD’Angeloの「Voodoo」「Black Messiah」にも参加している有名なジャズミュージシャンなのだそうだ。彼は11月の初めに腎疾患が原因の心肺停止で亡くなっている。

 

8. I Like America & America Likes Me

一見するとオートチューンがバリバリにかかった今風のポップソングだけど、メロディーはすごくドラマティック。元々エモバンドだったもんね、彼ら。すごく好きな曲。

 

9. The Man Who Married A Robot / Love Theme

どうやら今作、巷ではレディへの「OK Computer」とよく比較されているらしい。似ているという人もいれば似ていないという人もおり、賛否両論分かれている。

僕はこのことに関してはどうこういうつもりはないけれど、この曲に関しては明らかに「OK Computer」の影響下にあると言ってもいいだろう。そう、「Fitter Happier」のこと。

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20年前にはMacの音声機能によって読み上げられていたが、2018年の今ではその役割はSiriにとって代わられている。(同じApple製品なのがミソやね)

読み上げられる内容も「Fitter Happier」では哀れな中産階級労働者の「望みリスト」についてであったが、「The Man Who Married A Robot」ではネットとの充実した生活を送る幸せそうな男の姿についてと対照的である。もちろん、バンドはこの曲を通じて「インターネットに依存するのはいいぞ。」と伝えたいわけではなく、ネット社会への警鐘を鳴らそうとしていることは明らかだが。

このように考察しがいのある歌詞を持つこの曲は、「A Brief Inquiry Into Online Relationships」というタイトルを持つ今作のテーマを端的に説明する重要な一曲であると思う。

ちなみに、この曲の歌詞の最後は

You can go on his facebook.

という一節で締めくくられている。 

ここでの "his" とは@SnowflakeSmasher86という名前(ハンドルネーム)の主人公のことを指しているが、実は彼のページは実際にFacebook上に存在しているのである!

このことを知った時には流石に僕も驚いた。おそらくバンドが仕掛けたアカウントだと思われるが、リンクを貼っておくので皆さんもぜひ訪れてみてほしい。メッセージのやりとりもできるそうですよ。

https://www.facebook.com/snowflakesmasher86/

 

 11. It's Not Living (If It's Not With You)

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80's風の爽快なポップス。いいメロディーと綺麗な音のギターで人畜無害な曲。

と思いきや、歌詞の方はマッティーのドラッグ依存を暗示している内容。MVも80年代風味の演奏シーンとドラッグ使用によるものと思われる彼の幻覚が同居するカオスな内容。個人的にはラストが「インセプション」っぽくて好きだな。

 

続く12曲めはUKアコースティックバラード風、13曲めはジャズ風、14曲めは80年代AOR風なのだが、この他にもトロピカルハウス、ゴスペル、IDM、ヒップホップだったりと、アルバムを通じて収録曲の音楽性はバラバラで統一性は全くと言って無いのが今作の大きな特徴の1つと言えるだろう。

 

だが、クロージングナンバーのI Always Wanna Die (Sometimes)、これは「The Bends」の頃のレディへみたいな感動的なロックバラードなのだが、いい感じに大団円のような役割を果たしていて、楽曲ごとのコンセプトがてんでバラバラなこのアルバムに謎の統一感と、名盤っぽい雰囲気をもたらしてくれるのである。今作の中でも1番重要な曲であろう。

 

収録曲のキャラクターがバラバラなのに謎の統一感がある名盤。

そういう点では、僕はこの「A Brief Inquiry Into Online Relationships」はビートルズのホワイト・アルバムに似ているかもなと思った。

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全編を覆う異様な才気に関しても、共通したものがあると思う。

 

まあとにかく、このアルバムで彼らThe 1975がネクストレベルに到達したことは誰の目にも明らかだろう。以前の作品に比べても今作に対する絶賛度合いが圧倒的に違うのが何よりの証拠。来年にリリースされる予定の次回作「Notes On A Conditional Form」にも期待大である。

 

頑張れThe 1975!!!

 

 

 

ポール・マッカートニー 全アルバムレビュー [80年代編]

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こんにちは。前回の続きです。

 

 

 

10. McCartney Ⅱ (1980)

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日本での大麻事件の後、ポールが10年ぶりにソロ名義で発表したのがこのアルバム。

録音自体は前年に行われているため、「Frozen Jap」や「Dark Room」が日本での経験を基にして書かれた曲である、という説は実は正しいものではない。

ところでこの「McCartney Ⅱ」、個人的には以前から僕の愛聴盤となっていて、結構聴く頻度が高い。全ての楽器をポールが担当したというチープな手作り感が好きなのである。

これはソロ1作目の「McCartney」にも通じる点で、手作り感が故にあの大天才ポールを身近に感じられるような、そんな錯覚を引き起こすのである。

「McCartney」の頃と比べて、録音機材は4トラックから16トラックへ進歩しており、そのおかげもあってシンセサイザーの大々的な導入や一人多重コーラスなどより凝った曲作りがなされている。

収録曲の方も、全米1位を獲得した大ヒットシングル「Coming Up」やポールの一人多重コーラスが美しい「Waterfall」「Summer's Day Song」、またテクノポップのはしりとして隠れた名曲とも言われる「Temporary Secretary」など聴くべき良曲が多く揃っている。

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上記に挙げた曲以外にもインスト曲やヘンテコな曲などバリエーション豊かで聴く者を飽きさせない大充実の内容となっている。

今度の来日公演でもこの作品からセットリスト入りする作品が出てくることを願っている。

 

 

 

11. Tug Of War (1982) 

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プロデューサーにあのジョージ・マーティンを迎えて制作されたこの「Tug Of War」は全英・全米チャートで共に1位を獲得し、批評家からも高い評価を獲得した大成功作となった。

世間で言われているようなビートルズへの回帰色はさほど感じないけれど、ポップアルバムとしては普通に優秀でポールらしさが出た良い作品だと思う。

さてこの「Tug Of War」というアルバムタイトル、日本語では「綱引き」という意味である。

そんなタイトルが表すように、このアルバムに収められた曲の多くが「二項対立」のテーマを持っている。ざっと挙げてみると、

・Somebody Who Cares:「見捨てる人」と「見守ってくれる人

・The Pond Is Sinking:「ポンド」と「ドル、円などその他の通貨

Wanderlust:航海に「情熱を持つ人」と「野心を持つ人

・Get It:人生の「成功」と「失敗

といったところだろうか。

特に「Ebony And Ivory」、これはスティーヴィー・ワンダーとのデュエットで話題となった大ヒット曲だが、歌詞の方はというと

キーボードやピアノの黒鍵と白鍵のように、黒人(スティーヴィー)と白人(ポール)が調和する

という二項対立、そして如何にも80年代のスティーヴィーが歌いそうな内容となっている。

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それにしても、「Ebony And Ivory」での人種問題にしろ、先ほどの「The Pond Is Sinking」での経済問題にしろ、この「Tug Of War」では世界情勢を踏まえたかのような歌詞を持った曲が多い。

これは恐らくジョン・レノンの死が大いに関係しているのではないのではないかと僕は思う。

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ジョンがいた頃は、世界平和や反戦といったテーマを掲げた曲は彼に任せて、ポールは気ままにポップなラブソングを歌っていればよかった。(まあ、それしか歌ってなかったというわけではないけど)

ビートルズ後期でも、解散して2人がソロになった後もそれは変わらなかった。

だが、1980年にジョンが殺されてから、ポールはジョンの分も自分が頑張らなくてはいけない、彼の役割を自分が担っていかなくてはならないと思ったのだろうか。これ以降のポール作品では国際情勢に言及した曲が明らかに多くなっていく。現時点での最新作「Egypt Station」でもその傾向は変わっていない。

政治的な曲を作るのは悪くないことだと思うが、70年代のようなのびのびとした感覚がこれ以降のポールから消えてしまったように思えるのは残念だ。

 

 

 

12. Pipes Of Peace (1983) 

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もともと2枚組で発売する予定だった「Tug Of War」に入りきらなかった曲を集めてひとつの作品にしたのがこの「Pipes Of Peace」である。

前作ではスティーヴィー・ワンダーという黒人音楽の巨匠をゲストに迎えたが、今作では当時黒人音楽界の期待の星であったマイケル・ジャクソンの参加が話題となった。そんな彼が参加した曲のうちのひとつがあの「Say Say Say」である。

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当時の「スリラー」ブームも手伝って、全米1位の大ヒットシングルとなった。ポールの商業的な最盛期はこの頃だったのかもしれない。

あ、優しいメロディと少年達の声によるコーラスが印象的なタイトル曲も名曲なので忘れずに。

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今作でもジョージ・マーティンとのコラボレーションは健在で、これは次作の「Give My Regards To Broad Street」まで続く。

ビートルズ色をより打ち出していくことが狙いだったのかもしれないが、その頃に比べてしまうとやはり一歩劣るというか、「何か」が足りない感じを受けてしまう。

その「何か」というのが作曲面でのジョンの手助けだったり、ジョージのギタープレイ、そして何よりもリンゴの叩くドラムといった要素なんだろうな。

ジョージ・マーティンの起用によって、却ってビートルズの偉大さをより痛感させられる結果となっているのはなんとも皮肉である。

 

 

 

13. Give My Regards To Broad Street (1984)

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ポールが主演・脚本を担当した同名映画のサウンドトラックとして発売されたのが今作。

プリンスもそうだけど、80年代ってミュージシャンが映画に出演したりするのがめちゃくちゃ流行っていて、ポールもその流れに乗じた感じか。MTVはやはり偉大ですね。ちなみに映画の出来はアレらしいけど…。いつかきちんとこの目で見てみたいですね。

それでサントラの方はというと… ビートルズやウイングス、そしてソロでのナンバーが大半で、それプラス「No More Lonely Nights」などの新録曲が少しというアルバム構成。

こういう再録モノっていうのは大体失敗に終わってしまうことが多いのだが、これが意外なほどイイのだ。(ビートルズナンバーそのものを解禁してしまったのは前2作の失敗を認めるようなもんじゃないのかという野暮なツッコミは言わない約束で)

80年代というかつての大御所達が軒並み苦戦を強いられたロックンロール暗黒時代に制作されたという時代背景を考えると、これは大成功作と言っても過言ではないと思う。

選曲の方も、如何にもロックといった雰囲気の曲を避けてポップスやバラードを中心に選曲したのは正解だったのではなかろうか。ポールの書くメロディは時代に関係ない普遍のモノなんだなと改めて痛感させられる。

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中でも白眉なのは「Eleanor Rigby」の再録版。本編の後に「Eleanor's Dream」というオーケストラ作品が続く組曲形式の作品となっているが、のちのポールのクラシック音楽挑戦を予感させる、それに向けての習作のような作品と考えて聴くと面白い。本当に多彩な人ですね。(映画制作以外は)

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14. Press To Play (1986)

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セピア色のクラシカルな雰囲気のジャケットが印象的な作品。

プロデューサーはポリスやスティングとの共同作業で有名なヒュー・パジャム。彼のプロデュース作品に特徴的な、ゲーテッド・リバーブ処理されたドラムサウンドが全編にわたって鳴り響いていて如何にも80年代といったような感触。

だが、そんなサウンドとは裏腹にアルバム全体の印象はというとかなり地味である。恐らくポールのキャリアの中でも1、2を争う地味さ加減なのではないか?

曲の方もこれといった出来のものは見当たらないし、ポップな方向と実験的な方向のどちらにも振り切れてない感じで中途半端なのである。個人的にも後々この作品のことを振り返ることはあまりなさそう…。

あえて1曲挙げるのするならば、「Only Love Remains」だろうか。アルバムジャケットの印象そのままの、セピア色のクラシカルな雰囲気の甘いラブソングである。如何にもポールが書きそうな曲だし、このくらいの曲を書くくらいなら朝飯前なんだろうな。

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15. Flowers In The Dirt (1989)

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エルヴィス・コステロとの共作で話題となった作品。

これまでソロ活動において組んできたコラボレーターとは違って、コステロは制作中ポールと対等な立場に立ち、時には辛辣な意見も投げかけたそうだ。まるでビートルズ時代のジョン・レノンのように。

これにポールは発奮したのか、出来上がったアルバムは結果として前作とは比べ物にならないほどの完成度を誇る佳作となったのである。

だが、そのようなアルバムの出来にも関わらず結構不遇な扱いを受けているのも今作の特徴である。

2017年にアーカイブシリーズとして再発されるまでポールはこの作品を聴き返すことはほとんどなかったと言っているし、その証拠にベスト盤にこの作品からの楽曲が入ることは少ない。というか一度も入ったことがないのである。

どうしてだろう?「My Brave Face」なんかコステロ色が色濃く出た良質なパワーポップですごくイイと思うのだが… 「Distractions」や「Put It There」も存在感は薄いものの良曲であると思う。

自分が自分がという感じで、前に出たがりのポールがコステロ色の濃く出た今作をあまり気に入っていないという説もあるが、あながち間違っていないのかもしれない。

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というわけで、今回の記事では80年代のポール作品を一気に駆け抜けました。

80年代という時代は、MTVの力によるポップス勢の躍進などにより、多くのロックスターが自分を見失い低迷してしまう時期でした。

例えば僕の大好きなデヴィッド・ボウイ。彼のような鬼才でさえも進むべき道を見失い袋小路にはまってしまったんですね。(彼に関してはこれ以外にも様々な要因があっての低迷なのですが、それはまた別の機会にお話しします)

そんなロックスターにとっての鬼門のような時代にあっても、ポールは持ち前のポップセンスを駆使して上手くアジャストし、以前のようにヒット曲を連発することは難しくなったものの大きなダメージを負うことなくこの10年間を駆け抜けることができました。これは本当に凄いことだと思います。ポールのセンスは普遍のものなんだと実感します…!

 

次回からは円熟味を増した作品を発表した90年代に突入……  といきたいところなのですが、もう一つ優先してやらなくてはいけない企画があるのでそっちを先にやってから、またこのポールの企画を進めていこうと思います。それではまた。

 

 

 

ポール・マッカートニー 全アルバムレビュー [70年代編・その③]

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前回の続きです。今回はウイングスの最後の3作を一気にまとめてレビューしていきます。

 

 [目次]

 

 

7. At The Speed Of Sound (1976)

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1975年の9月から翌76年の10月までの1年間に渡ったワールドツアーの合間に録音された、ウイングス5枚目のアルバム。

このアルバムの最大の特徴は、収録曲の約半分でポール以外のメンバーがヴォーカルを務めている点。前作でもポール以外のメンバーが歌う曲はあったのだが、今作ではその傾向がさらに加速している。

考えてみれば、ビートルズでも比率にこそ偏りはあるもののメンバーの4人それぞれがヴォーカルを担当する曲が存在していたわけで、それが各々の個性を際立たせビートルズのバンドとしての強固さを裏付けるひとつの証拠となっていた。

こういった経験を踏まえて、ポールがウイングスのこれからの活動を見据えた上で、各メンバーの個性を打ち出していく必要があると考えてのこのアルバム構成だったのだろう。

だが、この試みは正直成功したとは言い難い。仕方のないことである。ビートルズは4人全員が個性と才能に溢れた奇跡のような音楽集団だったのでさっき言ったような試みも当たり前のように成功させてしまうが、そんなバンドは稀である。才人ばかりが集まったバンドなんてこの世にはそうはいないわけである。ウイングスもその例に漏れなかった。それだけのことである。

確かにポールは超ド級の才人である。その証拠として、彼が書いた「Let 'em In」「Silly Love Song」「Warm And Beautiful」の3曲の完成度は凄まじく高い。

だが、それ以外の曲、つまり他のメンバーのヴォーカル曲は退屈な上に個性など皆無で全く印象に残らず、結果としてアルバム全体の印象としては前述のポール作の3曲くらいしか頭に残らないのである。もしかするとウイングスの熱狂的なファンにもなるとまた違う感想を持つのかもしれないが…。僕のようなフツーの音楽ファンとしてはやはり、あまり印象に残らないアルバムという評価になってしまう。

だが僕の低い評価とは裏腹に、このアルバムはウイングス最大のヒット作となる。アルバムの発売がちょうど全米ツアーと重なっていたことが効いたのだろう。実際全米ツアーも大成功に終わり、すべての日程が終わった時にはポールは感動のあまり泣き崩れたしまったほどだったらしい。

この頃のウイングスに関する有名な逸話として、「ウイングスのステージを観にきたファンが『ビートルズって何?』と言った」というのがある。彼らの勢いを端的に表しているエピソードだろう。

ついにウイングスは、「ビートルズポール・マッカートニーの新しいソロ・プロジェクト」から「ポール・マッカートニーというベーシストがヴォーカルを務める最近人気のバンド」という評価を得ることができたのである。

 

 

 

8. London Town (1978)

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全米ツアー後に発売されたライブ盤「Wings Over America」とベスト盤の間に挟まれたせいか、なんとも地味な印象を受けてしまうアルバムがこの「London Town」である。アルバムジャケットからして地味だし…。

前年に出した大ヒットシングル「Mull Of Kintyre」におけるトラッド・フォーク路線はこのアルバムでも引き継がれている。

それに加えて、「With A Little Luck」をはじめとしてシンセサイザーがフィーチャーされている曲や、「Girlfriend」「Morse Moose And the Grey Goose」などのディスコ/R&Bの影響を受けた曲も散見される。まあ、当時流行っていた音楽スタイルに乗っかってみたんだろうな。

悪いアルバムでは全く無くて、むしろ何回か聴くと良さが分かってくる所謂スルメ的な作品だと思う。優先度としては低いけれどね。

 

 

 

9. Back To The Egg (1979)

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ウイングスの7枚目にして最後のアルバム、それがこの「Back To The Egg」である。

このアルバムタイトルを訳してみると「タマゴの頃に帰る」、すなわち原点回帰を意味しているのだと思うが、なるほどアルバム中にはかつてのポールが書いていたようなポップでノリのいいロックンロール曲が数多く含まれている。

また、「ロケストラ」プロジェクトでのセッションから誕生した一発録りの「Rockestra Theme」や「So Glad To See You Here」といった曲や、コンセプトアルバム的な構成もあって、ウイングスのディスコグラフィの中でも「Venus And Mars」と並んでビートルズ風味の強い作品と言うことが出来るだろう。

他にも「Arrow Through Me」といった落ち着いた雰囲気の大人向けポップスや、一瞬P-Funk曲と勘違いしてしまいそうな小品「Reception」など、バラエティ豊かな曲が揃っており、影は薄いが聴きどころの多い魅力的な作品だと思う。

同年発表されたシングルでも、アルバムには収録されていないものの「Goodnight Tonight」や「Wonderful Christmastime」など完成度の高い作品が多数リリースされており、この時期のポールの創作における充実度が伺える。

しかし、原点回帰を謳った作品が結果としてウイングスとしてのラストアルバムとなってしまったことはなんと言う皮肉だろうか…。

 

 

 

「Back To The Egg」発表後、ポールは来日公演のために訪れた日本で大麻所持法違反のため逮捕され、そのことがキッカケでウイングスは解散してしまったのは皆さんの知るとおり。

なのでウイングスのアルバムをレビューするのは今回で最後なんですね。次回からはまたポールのソロ名義の作品について書いていきます。

ウイングスというグループ、これまでは彼らがどんな音楽をやっているのかあまり分からなかったし馴染みは薄かったのですが、作品を聴いていて思ったのはすごく真っ当でオーソドックスなポップ・ロックを演奏する集団だったんだなあということ。ぶっちゃけポールのソロとは実験色が少しだけ薄まっただけであまり変わらないかもしれないです。(笑)  でも裏を返せば安心して聴けるという意味でもあります。

もちろんアルバムごとにそのカラーは違っていて、ビートルズっぽいのもあれば泥臭くロックしてるものや民族音楽っぽいことをしている作品もあったり…。聴いていて結構楽しかったです。その中であえて順番をつけるなら、上から

Venus And Mars

Band On The Run

Wild Life, Back To The Egg (同率)

At The Speed Of Sound

Red Rose Speedway

London Town

という感じになるのかなあ。何度も言うけど、「Venus And Mars」はホントに傑作なので、特にビートルズファンの人は絶対に聴いてください。

 

というわけで、また次回に続きます〜。

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ポール・マッカートニー 全アルバムレビュー [70年代編・その②]

どうも。

green-david0705.hatenablog.com

前回の続きです。今回は「Red Rose Speedway」〜「Venus And Mars」と、ウイングスがスターダムへのし上がっていく過程に生み出された3作品をレビューしていきます。

 

 [目次]

 

 

4. Red Rose Speedway (1973)

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前作とは対照的に、たっぷり半年間のレコーディング期間を費やして作られたウイングスとしては2枚目のアルバム。

この作品、全米1位を獲得して、評論家からのウケもなかなか良くて隠れた名盤扱いされてるんだが、少なくとも僕の耳にはそこまで良いとは思えなかった…。

確かに全ての曲がある程度の水準以上のクオリティではあると思うし、シングルにもなった「My Love」は良い曲。

でもなんか、全体的に特徴を見つけづらいというか…。アルバムのカラーがなかなか見えてこないのだ。「My Love」も良い曲と言ったって「Maybe I'm Amazed」ほどではない。

最終曲ではアビーロードのB面を彷彿とさせるメドレーにも挑戦しているけど、正直出来はイマイチであまり印象に残らない。

この作品が評価されるんだったら「Wild Life」もちゃんと再評価し直してくれよ!そう声を大にして叫びたいのである。これは僕の勝手な意見だけどね。

まあ人によって好き嫌いは違ってくるからしょうがないですね。僕の意見はとりあえず横に置いといて、一度は聴いておくべきだとは思う。決して駄作ではないです。

 

 

5. Band On The Run (1973)

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「Red Rose Speedway」のリリース後「Live And Let Die」などの傑作シングルを挟んで発表されたのがこの作品。ウイングスのメンバー以外にも数多くの有名人が参加しているアルバムジャケットが印象的。その中の1人にはなんとあのフロイトの孫もいるらしい!

この作品は一応ポールのキャリアを通じての最高傑作と位置付けられることが多いのだが、まさしくその通りだと思う。完璧なアルバムですわコレ。必聴です。

全英・全米チャート共に1位を獲得する大ヒットを記録すると同時に、批評家からもベタ褒めされたこの「Band On The Run」。ビートルズ解散から3年かけてようやく掴んだ成功らしい成功だったんですね。なんだか自分まで感慨深くなってしまう。

冒頭の2曲を始め、収録されている全ての曲がポールらしいキャッチーなメロディーを持っていてかつバラエティーにも富んでおり、一切のスキを感じさせない。

ポールが叩くドラムも曲にうまくマッチしていていとをかし。彼自身がドラムを担当するアルバムはいくつかあるけれど、個人的にはこのアルバムでのプレイがダントツでイイと思う。キース・ムーンが絶賛するだけのことはありますね。

しっかし、アルバム制作に入る直前になってバンドメンバーが脱退したり、レコーディング先のナイジェリアでデモテープの盗難にあったりと災難続きの状況からこんな傑作を作り上げるなんて…。

もしかしたらポールは苦しい状況に置かれると、より力を発揮するタイプなのかなと思ってしまう。だって、ビートルズ時代だってジョン・レノンという大天才が常に近くにいて2人でしのぎを削っていたわけだし。そういう厳しい環境に置かれていたからこそ、後年に渡って残るような素晴らしい曲を次々と書き上げることができたのではないか。

というわけで、この作品で大成功し一気にスターダムへと駆け上ったウイングス。ここからしばらくの間はこれまでのような苦労の続いた不遇の時代が嘘だったかのような大躍進を見せることとなるのであった…。

 

 

6. Venus And Mars (1975)

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「Band On The Run」の2年後、1975年に発表されたこの作品。

ピンク・フロイドの最高傑作として名高いモンスターアルバム「The Dark Side Of The Moon」に触発されたらしく、宇宙的なアルバムタイトルやシンセサイザーを大々的に取り上げた浮遊感漂うサウンド、曲と曲がシームレスに繋がっていくコンセプトアルバム的な構成とその影響は随所に感じ取ることができる。

アルバム自体の出来も最高!正直傑作とされている前作と並ぶかそれ以上に好きです。ポールをこれから聴いていきたい!って人にもめっちゃオススメ。強力なシングル曲が目白押しでかつ収録曲のバリエーションが幅広いので、聴いてて飽きないんですよね。

例えば「You Gave Me The Answer」なんかはアンソニー・ニューリー風味のボードヴィル調の曲。ジャズ風の演奏に乗せられて、なんだかほっこりするような安心するような…。「When I'm Sixty-Four」とか、こういう力の抜けた曲をたまにやってくれるのが僕がポールのことを好きな理由のひとつでもある。笑

今作からはポール以外のメンバーがボーカルをとる曲も収録されている。「Spirits Of Ancient Egypt」は作ったのはポールだがボーカルはデニー・レイン。ソロプロジェクトではなく、あくまで「バンド」であることを示したかったのだろうか?この傾向は次作でさらに加速することとなる…。

 

 

 

今回紹介した3作品はいずれもウイングスの全盛期を飾るアルバムとして位置付けられていて、(個人的な好みを除いて)どの作品を聴いても満足できると思います。特にオススメなのは「Venus And Mars」。この中では1番バラエティに富んだ作風で、ビートルズ風味も多分に感じられるため初心者でも入っていきやすいと思います。もちろん「Band On The Run」もイイよ!

というわけで次回はウイングスの残りの3作について書いていきたいと思います。どんな作品なのか今から楽しみです…!

 

↓続きの記事です

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