SMALL TALK

small talk : 世間話、雑談

2010年代・ベストアルバム10選

f:id:green-david:20191219101607j:plain

今回は、2010~2019年で個人的に気に入った聴いていたアルバムについて、つらつらと書いていこうと思います。
一応ディケイド・ベストということなので、ある程度シーンへの影響力という観点も考慮に入れて選出してはいますが、何せしっかり音楽を追いかけはじめたのが2013年と途中からで、その上全ての作品を聴けている訳ではないので、かなり個人的な好みが入っていると思います…笑  真面目に受け取らずに楽しんでいただけると幸いです。
 
 
 
 
 
 
1. The Next Day / David Bowie (2013)
ロックレジェンドの久々の帰還ということで、音楽界に一大旋風を巻き起こした作品。個人的にも音楽にのめり込む最大のきっかけとなった作品で、そう言った意味でもディケイド・ベストに選出してみた。
内容的にも、長年ボウイが取り組んできた様々なジャンルの音楽が混ざり合って、そこに彼の個性が加わることで唯一無二の存在感を放っている。雑多な印象にならずに、ある程度の統一感を持たせてまとめ上げてくる所がやはりベテランの技と言うべきか。総合力が非常に高い、万人に喜ばれるような傑作。ボウイ入門にもいいですね!
 
 
 
 
 
2. AM / Arctic Monkeys (2013)
ブラック・サバスばりのヘビメタ風ギターリフと90年代ヒップホップ風のリズムを掛け合わせた全く新しい、それでいて伝統的なロックンロール風味も感じることができる、新時代の傑作ロックアルバム。正直この作品によって、現在の彼らのロック界の王者的なポジションが確実なものになったんだろうなと思う。
冒頭を飾る「Do I Wanna Know?」も世界的にロングヒットを巻き起こすなど、セールス面でも申し分ない作品。ここ10年間で一番評価されるべきロックアルバムではないだろうか?
 
 
 
 
 
3. The Bones Of What You Believe / CHVRCHES (2013)
時代はめぐりめぐって、2010年代では80’s風サウンドがポップス界を席巻していたように感じる。
その中でも際立っていたのが、2011年結成のグラスゴー発エレクトロ・ポップスバンドのCHVRCHES。彼らはこのディケイドに3枚の作品を残したが、その中でも一番アイコニックなのがこのファーストアルバムであるように思う。
この作品がインディー界でヒットしたおかげで、可愛い女の子をフロントに据えた同じようなバンドがうじゃうじゃ大量発生したような、そんな印象。笑
昨年出たサードではもはやスタジアム・ポップとでも言うべき壮大なサウンドが繰り広げられているが、ここで奏でられているのはあくまでも懐かしいシンセ音を中心に据えた、少し宅録っぽいDIY的ポップス。楽曲に関しては出来にムラがあるものの、「The Mother We Share」「Guns」など飛び抜けて素晴らしい出来のものも。多分かなり主観が入っているとは思うが、この作品も2010年代の音楽シーンを表す1枚としてカウントしてもいいかなと感じる。
余談だが、彼らみたいにバンドの代表曲的な楽曲を早い時点でいくつ書けるか、そしてビジュアルが印象的かどうかという、新人バンドの将来性を占う基準みたいなものを自分に教えてくれた、そんなバンドがCHVRCHESだ。
 
 
 
 
 
4. Ghost Stories / Coldplay (2014)
前作「Mylo Xyloto」で陽キャ路線まっしぐらだった彼らがその次に発表したこのアルバムは、打って変わってどこまでも暗いメランコリックな雰囲気の作品となった。
フロントマンであるクリス・マーティンが前妻グウィネス・パルトロウと離婚したのがその主な要因と言われているが、そのせいなのか失恋ソングが多いのが曲のタイトルからも見てわかる。(失恋ソングとか言うと西野カナっぽく聞こえるけど)
構成自体も完全なコンセプトアルバムとなっており、終盤を飾るEDM調の名曲「A Sky Full Of Stars」でそれまでの地味な展開から一気に解放される流れも見事。今は亡きアヴィーチーといった2010年代のスターも関わっていることもあるし、アルバム全体を覆うメランコリックなムードが時代性とリンクしていると言えなくもない。この作品もディケイド・ベストに選出されるべき存在だろう。
 
 
 
 
 
5. DANCE TO YOU / サニーデイ・サービス (2016)
大滝詠一作品も手掛けた永井博によるジャケットが印象的なこの作品は、ジャパニーズ・ポップのいいところをこれでもかと詰め込んだアルバム。
これまでのサニーデイらしい、古き良き日本風のポップネス溢れたメロディと、近年の彼らの作品の特徴である、ファンクの影響色濃いリズムが組み合わさって、懐かしいけど新しい、そんな新感覚で楽しめる作品になっている。
春っぽい雰囲気の楽曲が多く、新しい日々の始まりといったようなポジティブな感覚を覚える一方、別れだとか死だとか、どこか切ない雰囲気も兼ね備えているのが印象的。(昨年の丸山晴茂の死もあってか、その印象はより強くなってしまった)
近年の音楽的トレンドの最先端をいくような作品ではないけれど、後世まで語り継がれるべきタイムレスな名盤であるように思う。
 
 
 
 
 
6. A Moon Shaped Pool / Radiohead (2016)
現代最高峰のロックバンドとして名高いレディオヘッド。彼らは2010年代に2つの作品を発表したが、個人的な感想を言わせてもらうとこの「A Moon Shaped Pool」の方が完成度としては高いと思う。
もうひとつの「The King Of Limbs」の方はアフリカン・ビートにも通じる肉体的なリズムの追求に重きをおいた作品であったが、それに対してこちらは徹底したメロディーの追求がなされた歌もの作品。美しいストリングスの旋律と、クラシック/現代音楽的な要素も相まって、例えるなら水墨画のような幽玄な世界を作り上げている。こういった作風は、トム・ヨークが長年連れ添ったパートナーと離婚したことも影響しているように感じる。美しさの裏に、一種の寂しさのようなものを感じさせるのである。残念なことではあるが、これもこの作品の素晴らしさを引き立てるひとつの要素になっていると思う。辛い出来事を創作活動への意欲に昇華させてしまうミュージシャン、本当に凄いと思う。
とにかく、このアルバムはタイムレスな輝きを放ちながらも、ロックの新しい可能性を切り開いた革新的な作品だと言えるだろう。惜しむべくは、彼らのレベルに追いつけるバンドがあまりにも少なく、ロック界全体を推進させる結果には至らなかったことか…。
 
 
 
 
 
7. FANTOME / 宇多田ヒカル (2016)
先ほど紹介したレディオヘッドのアルバムと似たキャラクターを持つ作品が、同じ2016年に発表された宇多田ヒカルの復帰作「FANTOME」である。
2010年に音楽活動を休止し、「人間活動」に取り組んできた宇多田には再婚や出産など様々な出来事が起こったが、その中でも今作に多大な影響を及ぼしたのは母親である藤圭子の死だろう。この悲痛な出来事を音楽で表現するかの如く、「花束を君に」や「真夏の通り雨」のように、この作品には明らかに死を意識したような楽曲が多く収録されている。「人生最高の日々」みたいに、開き直ったような明るい世界観の楽曲も収録されてはいるが、根幹をなすのはやはり先ほどのような重いテーマであることは確かだ。特に「忘却」でひたすら続く重苦しい展開は、聴いている者の心をえぐるほどに強烈である。
次作「初恋」のような、生の喜びに満ちた作品も魅力的ではあるが、音楽的な観点だとか時代性(そして個人的な好み)を考えると、この「FANTOME」の方がより好ましいチョイスであると僕は思う。
 
 
 
 
 
8. Post Pop Depression / Iggy Pop (2016)
これまた2016年の作品。えげつない年ですね…。(ちなみに3年前、この作品を2016年の年間ベストに選びました)
QOTSAジョシュ・ホーミとタッグを組んで制作されたこの作品、イギー本人はこれを生涯最後の作品にするという意気込みで制作していたらしいが、まさにイギー最終章を飾るにふさわしい、威圧感満載の大傑作に仕上がっている。ベルリン時代の二部作「The Idiot」と「Lust For Life」を青写真にして制作が進められ、その影響は各所に伺える。「German Days」なんか、ドラムサウンドはあのデニス・デイヴィスが叩く加工されたドラムそのものだし、歌詞もベルリンでのボウイとのナイトライフを思い起こさせるような内容だ。
先ほど名前が出てきたアークティック・モンキーズのマット・ヘルダースがドラムを叩いているなど、同時代性も兼ね備えてはいるけれども、基本的にこの作品はイギーのこれまで辿ってきたキャリアを総括するような内容となっている。そんな作品をどうしてディケイド・ベストに選んだのかというと、ロック・アルバムとしてただただ最高にカッコいいからだ。70を超えたベテラン・ロッカーがこんな圧倒的な作品を出すという事実に驚きを隠せないし、これからも元気に活躍してもらいたいものである。
 
 
 
 
 
9. WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO? / Billie Eilish (2019)
2010年代最後の年に登場した作品。正直な感想を言わせて貰えば、彼女は次の2020年代にこそ真価を発揮し、時代を先導していくミュージシャンだと思っている。なので今回のディケイド・ベストに選出するのは時期尚早だと感じなくもないが、あえて選出させてもらった。
彼女に関しては、まず21世紀に生まれたことに起因する、ジャンルを感じさせない自由なミックス感覚だったり、女性性をあまり前面に押し出さない点、最近のメインストリームで活動するミュージシャンには珍しく兄との共同作業で楽曲を制作している点など、その存在自体に圧倒的な「新しさ」がある。今までにありそうでなかったタイプのミュージシャンであると思う。これから彼女の手法を模倣するミュージシャンが数多く出てくることは容易に予想でき、前途多難な道のりが待っていると思うが、彼女の実力なら絶対に生き残ることができると僕は確信している。頑張れビリー・アイリッシュ
 
 
 
 
 
10. Blackstar / David Bowie (2016)
この10年間で、どれか1枚アルバムを選べと言われたら、僕だったらこの作品以外に考えられない。それくらい色んな意味で圧倒的な作品だった。
この作品を語る際に切っても切り離せないのが、発売2日後に起こったボウイの死という出来事である。この完全に仕組まれたとでもいうべきタイミングのせいで、意図して作られた遺作という評価を与えられがちなこの作品であるが、実際にはそうではないと僕は思う。
制作中の話を聞いていると、どうやら本人は生きる気満々で制作に臨んでいたらしい(転移が発覚する前は、治療も奏功していたようだ)
作品中になんとなく死臭が漂っているのは彼の作品ではいつものことだし、今となってはこのアルバムは死を前にした男のスワンソング集というよりかは、むしろボウイの新しい可能性を切り開こうとした野心作だという評価を与える方が妥当だろう。
というか、1975年の作品「Young Americans」以来彼が取り組んできたソウル/ファンクとロックの融合、そして「Outside」でのインダストリアルや「Earthling」でのドラムンベースなど、90年代以降彼が積極的に挑戦して結局消化不良に終わっていた、新しいジャンルとボウイ音楽との有機的な融合とも言うべき取り組みが20年以上の時を経てついに結実した、彼にとっては会心の出来の作品だったのかもしれないと今となっては思う。
ケンドリック・ラマーやフランク・オーシャンといった当時最先端のミュージシャンたちとのリンクも感じさせる今作。70年代には音楽界の最先端に立ってシーンを先導し、80~90年代と不遇の時代を過ごしたボウイであったが、最後の最後になって再び、シーンを先導する存在となったのだ。だが、「時代がボウイに追いついた」というキャッチフレーズはもう使うことができない。本当にズルい人である。
 
 

IPhone 11は案外買いなのかもしれない。

f:id:green-david:20191006120801j:plain

先月のAppleの新製品発表会でリリースされたiPhone 11/11 Pro。
 
 
昨年のiPhone XS/XR以来約1年ぶりの新モデルであるわけだが、ネット上では来年の2020年に発売されるiPhoneを待ち、今年のiPhone 11シリーズは買い控えるべきだとする意見が多く見られる。
 
何故なのか。僕が調べた限りでは以下のような理由が大多数を占めていた。
 
 
1. 来年のiPhoneは5Gに対応する
 
5Gとは、次世代の通信規格のこと。何ができるようになるとか、詳しいことは各自で調べていただきたい。
5Gサービスは、来年の2020年から本格的なサービスを開始すると言われている。
そして、来年発表予定の新型iPhoneは初の5G対応モデルとしてリリースされることがほぼ確実視されている。
よって、これから5Gが主流になっていくことを考えた時、今年のモデルは買わずにおいて、来年の5G対応iPhoneまで待つというのは合理的な判断といえるだろう。
 
 
2. 来年のiPhoneはデザインが刷新される
 
近年、AppleiPhoneのデザインを3年周期で変更するというパターンを確立している。(2014年のiPhone 6、2017年のiPhone Xがいい例だろう)
なので、来年の2020年に発表されるiPhoneも今とは違った、より先進的なデザインを取り入れるのではないかと噂されている。何かと批判されがちなノッチデザインも、もしかするとよりスマートな形に改良されるかもしれない。
1年でデザインが風化してしまう恐れのある今年のiPhoneのは避けたほうがいいのかもしれない。
 
 
3. 来年のiPhoneには様々な最新技術が搭載される
 
最近、Appleが出願した特許の中でひときわ注目を浴びたのが、画面内指紋認証の技術。
マスクが大好きな日本人にとって、マスク装着時にロックが解除されないFace IDという技術は、セキュリティ面など便利な時もあればいささか不便な時もある。
もしそこに、この新しい指紋認証技術を組み合わせることができたら、これはかなりの魅力増となるだろう。
そしてそんな新技術が、もしかすると来年のiPhoneに搭載されるかもしれないと考えると、待ちの判断もアリかなと思えてくる。
他にも、カメラの更なる進化やCPUの高速化なども考えられる。
 
 
 
 
以上から、今年のiPhone 11シリーズを積極的に買う理由はないように思える。
 
 
しかし、題名に書いたとおりだが、それでも僕はiPhone 11に限っては案外買いなのではないかと思っているのである。*1
 
 
まずは5G非対応の件に関して。
 
5Gサービスが本格的にスタートするのが来年の2020年。確かにそうなのだが、サービスが日本全国の様々な地域に浸透するのはもう少し先のことになるだろう。早くても1〜2年後だろうか。
もし今iPhone 11を買ってもその頃には、次のiPhoneへの買い替え時期が訪れている可能性が高いため、5Gを目当てに来年のモデルまで待つ必要性はほとんどないと僕は考える。
(個人的に自分は都市部から離れた田舎のエリアに住んでいて、そのため5Gをすぐには利用できない可能性が高いことも理由としてあげられる)
 
また、来年のiPhoneは5Gへの最適化が完全ではなく、バッテリー消費が激しいなど何らかの不都合が生じる可能性も十分にある。
 
 
次にデザインの刷新について。
 
これに関しては好みの問題も関わってくるので一概には言えないのだが、iPhoneのデザインは年月を経ても陳腐にならない、普遍的で美しいものであるのは確かだろう。
例えば、未だに4S〜5Sの角ばったデザインは多くの人々から高い評価を与えられている。iPhone SEを愛用するユーザーだってまだまだたくさんいる。
また、現在ではフルスクリーンモデルが主流となっているが、ノッチデザインが不自然などの理由で、最新の機種だからといって最高のデザイン評価を与えられているとは限らない。
もし、来年新たなデザインを与えられたモデルが発表されても、これまでのモデルが古臭く見えるなんてことは考えられにくい。
 
 
最新技術について。
 
iPhoneに新技術が搭載される時は不具合が起こりやすいというのは有名な話である。いわゆる初期不良というやつ。
画面内指紋認証なんかも、初期不良が多発しそうな香りがプンプンする技術であるように思えて仕方がない。(そこにロマンがあるのだという意見も否定はしないが)
また、Face IDに加えて新たにTouch IDというもうひとつの入り口を用意するというのは、セキュリティ的にどうなのかと感じてしまう。
 
あと、CPUの高速化は、確かに速いに越したことはないのだが、僕が所有する3年前のiPhone 7が今でも余裕で現役で活躍しているあたり、正直体感差はほとんどなくなっていると思っていいだろう。
 
カメラに関してだが、iOS13.2で実装される新機能「Deep Fusion」に関する記事を見てみると、余りのスゴさに度肝を抜かれる。と同時に、スマホのカメラにこれ以上何を望むまいという感想が浮かぶ。(もちろんiPhone 11で利用可能な機能である。)

iphone-mania.jp

カメラを理由に来年まで待つ必要はほとんどないだろう。
 
 
そして最後になるのだが、iPhone11はめちゃくちゃコスパがいい。
この前のAppleの発表会を生で見ていて、個人的に一番興奮したところはこのiPhone 11の価格が$700を切ることが発表された時だった。
超使えるカメラと、iPhone史上最強のスペックを備えてのこの価格はコスパとしか言わざるを得ない。
さらに、僕が現在使っているiPhone 7をしかるべき方法で売れば、さらにここから2万円近く安くなるのでかなり迷っている。
 
 
 
以上の理由から、僕は今回のiPhone 11、結構買いのモデルなのではないかなと感じている。
来年の大幅アップデートを控えていることもあり*2、地味な扱いを受けがちなモデルではあるが、例えば4インチ時代においてのiPhone SE、4.7インチモデルにおいてのiPhone 8のように、このiPhone 11はノッチありフルスクリーンモデルにおける集大成的なモデルになるだろう。
もしかすると先のふたつのモデルの様に、名機として扱われるポテンシャルをiPhone 11は十分に秘めているのではないだろうか。
 
そんなポテンシャルを秘めたiPhone 11ちゃんを、あなたも手にしてみてはどうだろうか?
 
 
 
 
 

*1:iPhone 11 Proに関しては僕はあまりオススメしない。何故なら高すぎるから、これに尽きる。動画をよく撮影するYouTuberのようなクリエイターの方々にはいいかもしれないが、一般人には11で十分だし、差額でAirPodsiPadなど他の製品を買った方が絶対幸せになれると確信している。

*2:来年のiPhoneについて様々な噂が飛び交っているが、実際のところ全て憶測の域を出ないものがほとんどだと思う。だってまだ今年のモデルが出たばっかりなんだよ?! あと1年もあるんだよ?! まだ開発段階であろう次のiPhoneに関する正確な情報を一般人が握っていると思う方が間抜けであると思う。

The Cure : 全アルバムレビュー(1983〜1989)

こんにちは。
 
フジロックでのThe Cureのライブが目前に迫ってきましたね!
このタイミングで前の記事の第二弾、行こうと思います。ではどうぞ!
 
 
 
 
 
 

5. Japanese Whispers (1983)

f:id:green-david:20190725002820j:plain

 
この作品は本来ならEPとしてカウントすべきではあるが、キュアーのバンド史上重要な転換点となる作品なので、特別にここで紹介する事にする。
 
「Pornography」の頃の地獄のような状況を経て、崩壊してしまったThe Cureロバート・スミスもキュアーに対する熱意を失い、Siouxsie & The Bansheesのギタリストとしての活動などのサイドワークに勤しむこととなった。
しばらくの気分転換の後に、キュアーの再始動を決意したロバートだったが、何を思ったのか、以前の陰鬱なスタイルとは似ても似つかない、健康的で快活なポップソングを作り始める
その結果リリースされたのが、この「Let’s Go To Bed」をはじめとする、「ファンタジー三部作」とも呼ばれる一連のシングルである。

www.youtube.com

 

当時流行りのディスコ調の曲。キーボードに転向した唯一残ったバンドメンバー、Lolの好演が光るMVは、数少ない彼の見せ場の1つだろう。
おそらく、当時のファンはとんでもないレベルで度肝を抜かれただろう。後追いファンの自分でさえ、この変貌ぶりにとても驚いたのだから…。
 
「The Walk」も同じ路線のディスコ・ポップ。路線変更しても、耽美な雰囲気をしっかり残している点に好感が持てる。

www.youtube.com

 

「The Lovecats」はキュアー初のジャズ調ナンバーに仕上がっている。
ロバート曰く、ディズニーの「おしゃれキャット」をイメージしたそうだ。でもMVはちょいキモカワ路線か?

www.youtube.com

 

そして、これらのシングル曲を軸にして制作されたEPが「Japanese Whispers」である。なぜ日本がタイトルなのかは不明だが、不思議としっくりくる題名でもある。
他の収録曲に関しては、当時の流行りの音を取り入れた、何の事は無い平凡な曲が並んでいる。無理して聴く必要もないだろう。
しかし、ここで行なった大幅な路線変更がのちの大成功に繋がると考えると、今作も重要作と言うことが出来るのではないだろうか。
 
 
 
 
 
 

6. The Top (1984)

f:id:green-david:20190725003141j:plain

 
「ファンタジー三部作」のヒットを受けて、所属レコード会社のポリドールはロバートにキュアーの本格的な再始動を命じる。
当時、サイドプロジェクトで忙しかったロバートは渋々これを受け入れるが、制作開始時点ではそれらしいアイデアは1つも持ち合わせていなかったという。自身のあるアイデアは全てサイドプロジェクトで使い果たしてしまっていたのだろう。
そんな背景で制作されたこの「The Top」は、確かに散漫で聴きどころの掴みづらい作品となってしまっている。
 
全ての曲において、ドラム以外の楽器をロバートが1人で演奏しているというのも良くないのかもしれない。
かつてのようなバンドアンサンブルが存在しないせいで、曲のメリハリのなさはっきりと感じることが出来る。サイモン・ギャラップはバンドの屋台骨を支える偉大なベーシストだったことを実感…。
ただ、「The Caterpillar」のような優秀なシングル曲が存在するのも事実。
こういう曲調の楽曲は、バンドではなくソロだからこそ実現出来る作品であろう。
バンドサウンドにとらわれず、もっと自由にのびのびとした曲を作ればよかったのに…と言わざるをえない、惜しい作品。
 
 
 
 
 
 

7. The Head On The Door (1985)

f:id:green-david:20190725003258j:plain

 
この作品からサイモン・ギャラップが復帰、また新ドラマーとしてボリス・ウィリアムス、新ギタリストのポール・トンプソンも加入し、前作で顕著であったバンドアンサンブルの弱さに対する不安は完全に払拭された。
また、今作の制作に入る直前にロバートが購入した12弦ギターも音色が全体的にフィーチャーされていて、ネオアコ・ポップ的な要素も色濃く出ている。
かと思えば、キュートでストレンジな「Close To Me」だとか、変拍子が特徴的な「Six Different Ways」のようなバンドの新たな一面を見せる曲も多く収録されている。これもひとえにバンドアンサンブルの強化の賜物だろう。

www.youtube.com

 
とにかくこの「The Head On The Door」、ポップながらも飽きのこない粒揃いの曲が多く収録された必聴盤である。バンドの世界進出への足がかりとなった力作と言うことが出来るのではないか。
 
 
 
 
 
 

8. Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me (1987)

f:id:green-david:20190725003450j:plain

 
世界中、特にアメリカ市場で特大ヒットをぶちかましたこのアルバムは、2枚組74分という盛りだくさんのボリュームの中に、バラエティあふれる良曲の数々を詰め込んだ作品となった。
ドラムの音とキーボードの重なり合いが気持ちいい「Just Like Heaven」やホーンセクションを導入した「Why Can’t I Be You?」のように躍動感あふれるゴキゲンなポップソングがあるかと思えば、「Catch」や「The Perfect Girl」といった可愛らしい小品も収録されている。
また、「Torture」みたいにかつてのスタイルを彷彿とさせる曲がある一方、「Hot Hot Hot!!!」のようなファンキーな新機軸にも挑戦していたりと、この一枚でバンド史を俯瞰出来るかのような仕上がりとなっている。
もしキュアー初心者の人がいたら、この「Kiss Me, Kiss Me, Kiss Me」から入門してみるのがいいのではないか。
 
 
 
 
 
 

9. Disintegration (1989)

f:id:green-david:20190725003707j:plain

 
前作の成功を経て、全世界から同系統の新作がリリースされることを期待されていたキュアーだが、もちろんロバート・スミスはそれにやすやすと応えるようなことはしない。
代わりに前作と全く系統の異なる、「Pornography」に次ぐ暗黒三部作の2作目、「Disintegration」を完成させたのである。
 
 新加入した熟練のキーボーディスト、ロジャー・オドネルによる重厚なシンセサイザーオーケストレーションがこの作品に荘厳さや重み、神聖さなどといった様々なキャラクターを加えることに成功している。この作品におけるMVPを1人選ぶなら、間違いなく彼が獲るだろう。
そんな彼のキーボードが炸裂しているのが「Lovesong」である。
シンプルな構成ながらも重厚な雰囲気が全編に流れる稀有な一曲。間奏部分でのキーボードとギターの絡みが何とも美しく、悶絶してしまう。

www.youtube.com

 

今作のテーマを簡単に表すならば「死に対するぼんやりとした憧れ」といったところだろうか。

「Lulaby」のMVでは、ロバートが蜘蛛男に捕らえられ喰われてしまう光景が描かれている。

これも死への恐怖というよりかは、むしろ美しいものとして描いているように感じてしまう。

www.youtube.com

 

また「Pictures Of You」では、大切な人の写真を見て想いを募らせていく様子について歌われている。

この歌詞、解釈のしようによっては「もう既にこの世からいなくなってしまった人の写真を眺めて思い出に浸る」という内容に感じる人がいるらしく、下の動画のコメント欄では故人を偲ぶような内容の長文コメントが数多く投稿されている。

www.youtube.com

 

彼らの音楽がどういう層の人達に聞かれてきたのか、そして如何に彼らの心を震わせてきたのかがよく分かるコメントばかりで本当に美しかった。

まさかYouTubeのコメント欄でここまで感動するとは人生分からないものである。

 

他にも重厚な「Last Dance」や「Prayers For Rain」、厳かな雰囲気でひたすら進行していく9分間の大作「The Same Deep Water As You」とそこから間髪入れずに演奏されるワンコードのキュアー流ヘヴィ・ロック「Disintegration」など、シングル曲だけではなくアルバム曲も凄まじいほどの完成度を誇っている。

 

彼らはこれまでも数多くの良作を世に送り出してきたが、ここまで心震わされる作品は他になかった。

彼らのキャリア中1番の完成度なのは疑いようがないどころか、ロック史上でもかなりの上位に食い込んでくる作品であろう。必聴作。

来たる今年のフジロックでも、ここから多くの曲が取り上げられることだろうから、時間がない!という人はこの作品だけでも聴いておいて欲しいところ…。

The Cure : 全アルバムレビュー(1979〜1982)

こんにちは。
 
今年の夏、初めてのフジロックに行きます。めちゃウキウキしています。
 
基本的に僕はフェスの前には、出演者のことは知らなくても予習しない派の人間なのですが、今回3日目のトリを飾るThe Cureに関しては、前から機会があればしっかり聴いてみたい!って思っていたのもあったので、今回こういった企画を立ち上げて聴き込んでいく事にしました!
 
フジに行く人にとっても、行かない人にとっても、役に立つ記事になれば幸いです…。それではいきましょう。
 
 
 
 
 
 

1. Three Imaginary Boys (1979)

f:id:green-david:20190629105238j:plain

 

彼らの記念すべきファーストアルバムが、この「Three Imaginary Boys」である。(初期の超有名曲「Boys Don't Cry」はここには収録されていないので注意)

 

www.youtube.com

 
「当時は何も分からずプロデューサーの言いなりで、思い描くような作品を作ることができなかった」
ロバート・スミスが後年語っているように、収録曲の多くはこの時期ありふれていたポスト・パンク調の曲で占められており、クオリティ面から見てみても将来スタジアム級のモンスターバンドになり得るような要素は感じられないというのが正直なところ。
 
ただ、艶かしい響きのするギターのコードストロークや、ダークという一言では表せない、何とも言えないホラーな雰囲気といった、後年にも通ずる「The Cure」的な要素は所々に感じることができる。
 
 
Subway Song」での金切り声なんか、夜1人で聴くとなかなか背筋が凍るのではないだろうか。
 
 
少し不快な気持ちになると同時に、ああこれがキュアーのスタイルなんだなと妙に納得してしまう。(これを聴いて気持ちよくなってくる頃には、もう彼らの音楽の虜になっているということなのだろう)
 
 
 
 
 
 

2. Seventeen Seconds (1980)

f:id:green-david:20190629110136j:plain

 
1st発売の2年後、彼らは2枚目の作品「Seventeen Seconds」を発表した。
 
そしてそれは、比較的ポップな曲が揃っていた前作に比べると、打ち込みのようなドラムビートが象徴しているように、圧倒的にミニマル・無機質・幻想的な作品に仕上がっていた。
これらはのちの作品にも一部受け継がれている要素であり、この作品をもってしてThe Cureの基礎となるものは完成したといってもいいだろう。
 
ただ正直にいってしまうと、あまりにもミニマリズムを突き詰めたがあまり、作中に印象に残るような曲が少ないのが弱点でもある。
ヒットシングル「A Forest」に到るまでの流れには目を見張るものがあるが、逆にいうとこの曲くらいしか頭に残る曲がないのも事実だ。(「Play For Today」や「M」など、ライブの定番曲にもなっている名曲もあるっちゃあるが)
 

www.youtube.com

 

なんか少し貶すような内容のレビューになってしまったが、聴いてみて損はない作品だと思うのでぜひ一度は耳を傾けてみてほしい。

 

 

 
 
 

3. Faith (1981)

f:id:green-david:20190629110859j:plain

 

1981年発表のサードアルバム「Faith」は、前作の方向性を煮詰めて、さらに発展させた作品となった。
 
基本的には3ピースバンドとしての音を大事にしながらも(特にベースの音が極端にデカイ!)、要所要所でのキーボードの使い方が前作に比べて上手くなっている。
 
 
「The Funeral Party」での空間を埋め尽くすようなシンセの音はJoy Divisionにも通じるものがあり、まさに葬式のような神聖な雰囲気を醸し出している。
 
実際、この頃はメンバーの家族の死が相次いでいたらしく、その出来事が今作の作風にも影響を及ぼしているのかもしれない。
 
死に対する行き場のない感情、初期のキュアー作品に通底する重要なテーマであると僕は思っている。
 
 
曲自体もポップソングとまでは言えないものの、印象的なソングラインを持つ耳に残る曲が多く、その点でも彼らのバンドとしての進化を感じる。
全てのゴス系バンドはこの頃の彼らをお手本にするべきではないだろうか、そんな感情さえも浮かんでくる。
 
初期の傑作として数えられることも多い今作は特に有名なシングル曲を擁している訳ではないが、聴きごたえのある良作と言い切ってしまおう。おススメです。
 
 
 
 
 
次の作品に行く前に、ちょうどこの2作の間の頃に発表された傑作シングル「Charlotte Sometimes」を紹介したいと思う。
 
 
キャッチーとは言えないまでも、妖しい魅力を放つメロディや、壁のように立ちはだかる厳かなシンセの音、美意識マシマシのMVも含めて全てが美しい、所謂ゴス系の曲としてはほとんど完璧な曲であると思っている。
 
だが、彼らのゴス路線はこのシングルで一旦終わりを迎えることとなる。次作でもこの作風が継続されるのだろうと思いきや、彼らは異形の怪物へと変貌を遂げてしまうのである。
 
 
 
 
 
 

4. Pornography (1982)

f:id:green-david:20190629112442j:plain

 
1982年発表の4作目。のちに「暗黒三部作」のひとつとして知られることになる名盤。
 
冒頭の「One Hundred Years」で顕著に表れているように、今作の特徴は異様なまでにダークでヘヴィーなサイケデリックサウンド。熱があったりする時に聴くと、本当にトリップしてしまいそうな気がする。
 
また全編を通じて鳴り響く、タムを効果的に用いた民族的なドラム・サウンドによって極度なまでの緊張感が作品全体に張り詰めている。
 
ロバート・スミスのボーカルも何かに追われているような焦躁感を感じさせるもので、今作における異様なムードに拍車をかけている。
 
実際、制作中のメンバー間における関係も最悪なものだったらしい。
 
最終的にベースのサイモン・ギャラップは今作のツアー中に脱退、それを受けてかロバートもキュアーの解散宣言を出すという結果になってしまった。
 
そんな曰く付きの作品である「Pornography」であるが、例えばDavid Bowieの「Low」だとか、NINの「The Downward Spiral」のような、他との替えがきかないような特別なポジションに存在する魅力的な作品であると思う。ハマる人にはとことんハマるものだろう。
 
同時に、キュアーのバンド史の中でも確実に避けて通ることのできない重要作でもある。
この作品からキュアー入門することは決して勧めないが、彼らの音楽を理解する上では絶対に聴くべき作品だろう。
 
 
 
 
次回に続きます…。
 
 

ポール・マッカートニー 全アルバムレビュー [90年代編]

green-david0705.hatenablog.com

こんにちは。

前の記事から間隔がかなり空き、年も変わって2019年になってしまいました。

来日ツアーも遠い昔の事のように感じますが、ポールのことだし近いうちにまた来てくれそうな予感がします。もしかしたら今年も来るかも、なんて。

というわけで今回は、90年代の作品について少し書いていこうと思います。

 

 

 

 

 

16. Off The Ground (1993)

f:id:green-david:20181113172235j:plain

前作から4年のブランクを経て発表された作品が、この「Off The Ground 」。

前作発表後に行った久しぶりのワールド・ツアーのバックバンドと共に録音された今作は、オーヴァーダビングを最小限にするなどの工夫を凝らした結果、非常に風通しのいいポップ・ロック作品となっている。

収録曲も安定したクオリティの佳作ばかり。特に「Golden Earth Girl」と「C’Mon People」からはビートルズ風味も感じられ、往年のファンの期待にも応えることが出来るだろう。

(ちなみにシークレット・トラックとして収録されている「Cosmically Conscious」は、1968年のインド滞在時に書かれた曲だそう。短い曲ながらもあの頃のポールの作風を存分に堪能することの出来る良作である)

ポールの長いキャリアの中ではどうしても地味な扱いをされがちな今作だが、初心者にも自信を持って勧めることが出来る作品だと思う。

 

 

17. Flaming Pie (1997)

f:id:green-david:20190107233249j:plain

この「Flaming Pie」は1997年に発表された作品。ビートルズの25年ぶりの新曲にも参加したジェフ・リンと、名伯楽ジョージ・マーティンが共同プロデューサーとして名を連ねている。

確かに、「Lady Madonna」を彷彿とさせるタイトル曲をはじめとしてビートルズ風味を感じさせる曲はいくつかある。

その中でも特にアコースティック・ギターの響きが印象的な小品「Calico Skies」は個人的にかなり好きな曲だが、そうしたひいき目を抜きにしても超名曲であることは間違いないだろう。もし60〜70年代にこの曲が出ていれば「Blackbird」に並ぶ評価を受けていたことは間違いないとさえ思える。

出来のいいA面に比べて、B面で少しおっさん臭い曲が増えて失速してしまうのが残念な点ではあるが、雰囲気の落ち着いた好作品であることは確かだ。

ちなみに、この作品はリンダの参加した最後の作品でもある。(彼女は98年に乳がんにより死去)  

最初期は賛否両論であったが、徐々にポール作品にとって不可欠なものとなっていった彼女のコーラスが聴けるのもこれで最後かと思うと、ちょっとした寂しさを覚える。

 

 

 

 

というわけで、今回はポールの90年代の作品について書いてみました。

この10年間では80年代の頃から一転、たったの2作品のみの発表と創作ペースは以前よりも落ちてしましました。原因としてはツアー活動を再開したことや、ここでは取り上げませんでしたがクラシックの分野に挑戦し、作品をいくつかリリースしたことがあると思います。

それと忘れてはいけない、ビートルズ・アンソロジープロジェクトもありましたね。色んな事に手を出し始めたのがこの90年代の特徴かもしれません。

だからと言って本業のソロ活動がおろそかになっていたわけでは全然なく、「Off The Ground」と「Flaming Pie」のどちらも一定のクオリティを保った力作であったように思います。風通しもよく、初心者にも安心して勧められる好盤です。

 

さて、次回はこの企画もついに21世紀に突入します。

最愛の妻を亡くし、自らもついに60代にさしかかろうとする時期に、彼はどんな作品を生み出していたのか。色々と考察を巡らせていきたいと思っています。

 

それでは、短いですが今回はこの辺で。

 

 

ビリー・アイリッシュの世界 Part. 2

こんにちは。

f:id:green-david:20190131215006j:plain

長いこと待ってました、とうとうかといった感じです。

Billie Eilishの待望のデビューアルバム「WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?」が3/29に発売されることが発表されました!!!やったね!!!

 

ちょうど1年前くらいに彼女の存在を知ってから、そのユニークな世界観と素晴らしい楽曲にどハマり。

コンスタントに発表されるシングルの数々に満足しながらも、やっぱりアルバムという形で彼女を体感したいなあと心のどこかで感じてはいましたが…。ようやくですね。当事者でもないのに謎の達成感を感じております。

 

ところで、去年に僕はこんな感じの記事を書いたのですが、

green-david0705.hatenablog.com

個人的にこの記事はこれからビリーの曲を聴いてみようかなって思っている人には絶対読んでもらいたいなと思っているテキストなんですが、 これが公開されてから現在までの半年(去年の7月〜今年の1月)の間にも彼女は新しい作品を発表し続けているんですね。

紹介しないにはあまりにも惜しい作品ばかりなので、ちょっと今回の記事で補足みたいな感じでちょこちょこ書いていけたらなと思います。ぜひ前回の記事と合わせてお読みください。

 

 

1. you should see me in a crown

www.youtube.com

去年の7月に配信されたこの「you should see me in a crown」は、これまでの彼女の曲に無かったようなダンサブルで激しい性格を持つ曲となっている。

「dont smile at me」期から「lovely」の頃までの彼女は、ラナ・デル・レイの妹分みたいな印象のポップソングを多く発表していたが、このシングルを発表した頃から作風が以前よりも少しヒップホップ寄りに変わってきたように思える。

歌声も、かつての少女のような透き通る声から情念のこもっている深みの増した声になっているようである。

ビリーのキャリアを振り返る上で、ひとつのターニングポイントとして記憶される曲だろう。まあ、実を言うとここから彼女の音楽性は驚くほどの速さで成長を遂げていくのだが…。

 

曲のタイトルはBBCの人気ドラマ「SHERLOCK」 に登場するキャラクター、モリアーティの劇中での発言から引用している。

ベネディクト・カンバーバッチ演じるシャーロックに「蜘蛛のような存在」とも称される彼。

そして蜘蛛は「you should see me in a crown」における主要なモチーフである。

モリアーティの存在はこの曲における最重要のインスピレーション源と言って間違いないだろう。

www.youtube.com

「And honey you should see me in a crown...」なんちゅうかっこいいセリフだ。

 

www.youtube.com

「エレンの部屋」でのパフォーマンス。

完全にモリアーティになりきっているビリー。こういう風に音楽以外のポップカルチャーともシームレスなつながりを見せてくれるところが好き。

www.youtube.com

 

 

 

 

2. when the party's over

www.youtube.com

ピアノとヴォーカルだけという最小限の構成ながら、超低音からファルセットまでの音域を自在に操る彼女のズバ抜けた歌唱力のお陰で感動的なバラードに仕上がっている。

全米チャート上の最高位は52位と地味ではあるが、100位以内にしぶとくチャートインし続けロングヒットを記録し、彼女の代表曲のひとつとなった曲である。

その証拠に、BBC Radio 1の企画でBring Me The Horizonがこの曲のカヴァーを披露している。

(このBBCのカヴァー企画では、Dua Lipaの「One Kiss」やArianaの「thank u, next」などある程度のヒット曲・有名曲でないと取り上げられることはまず無いので、この企画で取り上げられた曲=誰もが認めるヒット曲と見なすことが出来る)

www.youtube.com

歌詞は孤独や不安、やり切れなさについて書かれたもので、これらはビリーのその他の作品でも主題とされているテーマである。

そんな彼女らしさがはっきりと表れた曲がヒットしたということは、彼女のキャラクターや音楽に共感する病める若者が世界中にはたくさんいる、ということを意味している。

この状況は決していいものでは無いだろうが、彼女の今後の成功を約束する要素であることは確かである…。

 

 

 

 

3. come out and play

www.youtube.com

ホリデーシーズンに配信されたシングル。大した予告も無しに突然発表されたので、当時は驚いた記憶がある。

日本でもAppleのCMに大々的に使われていたので聴いたことのある人は多いかもしれない。

初めて見たときは「ついにビリー・アイリッシュの曲がお茶の間で流れる日が来たのか…」と謎に感動したなあ。(その割には周りの人たちの反応はめちゃ薄かったけど。トホホ)

いつもの彼女の曲らしからぬ、勇気づけられるような内容の歌詞である。

心がじんわり暖かくなる、癒されたい気分の時に聴きたくなる曲。なんでデビューアルバムに収録されないんだよお…

www.youtube.com

曲を作るときの彼女は、この曲の歌詞に描かれているような気持ちになるのだろうか。気になる。

 

 

 

 

 

4. WHEN I WAS OLDER

www.youtube.com

2019年の第一弾シングルとして発表された曲がこの「WHEN I WAS OLDER」である。

Netflix制作の映画「ROMA」にインスピレーションを受けて作られた曲だそうだ。

残念ながら筆者はこの映画を見ていないため、関連付けたレビューというのはできない。(観た後で何か記しておくべきトピックスがあれば、後日加筆修正をしたいと思う。)

だが、音楽的な観点から言うと、これは彼女のキャリアの中でもかなり大きなターニングポイントとなるであろう曲だと言うことが出来る。

最新鋭のヒップホップに大きく影響を受けたであろうシンプルなトラックメイキングとビート、そして彼女のキャリアで初めて取り入れられたオートチューンがこの楽曲のミステリアスな魅力をより一層引き立てている。

あと、途中で入るリコーダー?っぽい笛の音が少しFutureの「Mask Off」を連想させるところもミソである。

www.youtube.com

半年の間でここまでの成長を遂げるなんて…。 はっきり言って異常である。

 

 

 

 

 

5. bury a friend

www.youtube.com

そしてこれが、つい1週間前に発表された彼女の最新シングル。

そして同時に、来たるデビュー作「WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?」のリードトラックでもある。前のシングル「WHEN I WAS OLDER」の流れを汲んだ、ビートと最小限のウワモノで構成されたシンプルな、しかしポップスとしてはいささかストレンジな曲調に仕上がっているのが特徴。

 

ビリー曰く、この曲の歌詞はベッドの下に潜んでいるモンスターの視点で書かれたものだそう。

f:id:green-david:20190206111847j:image

同じような話で、海外の民間伝承にブギーマン伝説というものがある。ベッドの下などから現れ、子供に色んな悪さをする怪物だそうだ。

そしてこのブギーマン、特定の姿かたちを持たず、ただ単に不定形の恐怖が具現化したものであるというのだ。

みなさんにも同じような経験が無いだろうか。子供の頃、夜に理由もなく家の中や自分の部屋で恐怖を感じたり…。それこそがブギーマンの正体なのである。安心してください、もう怖がることは無いですよ。

すなわち、ビリーがこの曲の歌詞で言及している「モンスター」というのは自分自身の中に存在する恐怖心、つまり「モンスター」=「自分自身」であると考えることが出来るだろう。

そんなモンスターを、曲中では「friend」という言葉で置き換えて葬ろうとしている。おどろおどろしいタイトルにはこんな意味が隠されていたのである。

その証拠に、MVではビリー自身が「モンスター」を、少しホラーっぽい雰囲気で演じている。

f:id:green-david:20190206130137p:image

上に貼ったMVでの1シーンを見てもらうと分かるように、「when the party’s over」で出てきた黒い液体がここでも再登場する。

これは先程出てきた「恐怖心」の事を示唆していると考えるのが妥当かな。いつも彼女が取り上げているテーマですね。

このように、曲調は変わっても根底に流れるテーマは不変なのである。売れても軸はブレない。そういう姿勢が若者の共感を生むのではないだろうか。

 

そしてこの「bury a friend」、チャートアクションも凄まじいことになっていて、世界中で本当に人気のあるミュージシャンしかランクインしない事で有名なSpotifyのチャート「Global Top 50」においてAriana Grandeの「7 rings」に続いて2位にランクインしているのである!(2/6時点)

f:id:green-david:20190206130850j:image

今のAriのポップス界での勢いや不動の地位を考えると、この成績というのはちょっと考えられないくらい凄い数字であることは明らかだろう。Post Maloneよりも上ってのもまたね…。

この調子だと3月に出るデビュー作は間違いなく流行りまくるだろうし、もしかすると2019年のポップス界におけるゲームチェンジャーになってしまうかもしれない。今後の彼女の展開に注目しない手はないだろう。

 

 

 

 

というわけで一通りの紹介はこんな感じ。今の彼女の持つ勢いがどれほどのものなのか分かっていただけたらと思います。

今年か来年あたり、どこかのタイミングで来日してくれることを切に祈っておりますが、去年のサマソニでの冷めたオーディエンスの様子がヒップホップ畑で育った彼女の目に果たしてどう映ったのか。それがひとつ心配ではありますね。杞憂に終わるといいのですが…。

 

 

デヴィッド・ボウイと僕

あけましておめでとうございます。

今年もマイペースに更新していきたいと思ってますので、よければお付き合いくださいな。

 

 

ところで、今日1月8日はデヴィッド・ボウイの72回目の誕生日。

f:id:green-david:20180826011839j:plain

デヴィッド・ボウイは僕にとって特別なアーティストである。

そのビジュアルや彼の創り出す音楽など、すべての要素が僕に影響を与え、今現在の僕を形成している。

高校生だった3年間はほとんどボウイ漬けと言っても過言では無い日々を過ごした。この多感な時期に、彼が僕に与えた影響は計り知れないものがある。

高校入学と同時に突然現れ、その終わりと同時に突然消えていったボウイ。彼ほど特別な存在はもしかすると今後の人生でも現れないかもしれない。

 

僕の中でボウイがここまで大きな存在になった理由は一体なんなのだろうか?

そのひとつとして、彼が創り出す世界の奥深さがある。ボウイは好奇心旺盛な人として知られていて、彼が関心を寄せる事象は音楽や絵画の分野にとどまることなく、書籍や黒魔術の分野、ついには量子物理学にまで至ってしまうほど多岐に渡るのである。

そういった様々な分野から影響を受けて創作されるボウイの作品は当然のように奥が深く、受け取る側も相応の知識量をもって考察することが要求される。もしかすると論文のひとつでも書けてしまうかもしれないくらい難解なのだ。

だが反面、その謎解きの過程は大変興味深い発見も多々あり、また知的好奇心をくすぐられるものでもある。

このようなボウイ考察の面白みに気付かされたきっかけは、「デヴィッド・ボウイ詩集ースピード・オヴ・ライフ」という1冊の本に出会ったことがきっかけである。(現在は絶版)

ci.nii.ac.jp

(どうやら、CiNiiによると国内のいくつかの図書館で閲覧ができるそうです。興味がある方は絶対に読んでおいたほうがいいと思います。)

 著者である古川貴之氏による、原詩から忠実に翻訳された訳詞とアルバム・曲ごとの丁寧かつ大胆な考察に完全に魅了されてしまった僕は、いつかボウイのことをある程度理解できる頃になったら、自分なりのボウイ考察をなんらかの形でまとめてみたいと決意したのであった。

 

そして現在、僕は大学生である。まあまあ自由な時間はあるし、諸先輩方ほどでは無いにしろボウイに関する知識も身についたと思う。

ならば今しかないということで、これからこのブログ上で「ボウイ考察シリーズ」と銘打って論を展開していこうと考えたわけである。

こんな大げさな題名をつけている割には、文章は未熟になってしまうだろうし考察も浅いところがあるかもしれないが、自分も持てる力を精一杯振り絞って書いていくつもりです。

 

 

今回はこんな感じで自分語り&所信表明的な記事になってしまいました。

では、また日を改めて第1弾の記事を投下していきたいと思います。(しばらく後になりそうですが…苦笑)